INTERVIEW
2023.02.18
――そんなエピソードに合わせた新曲「Look at me♡」自体もまた、ハピアラの楽曲としては非常に斬新で、衝撃的なものだったと思います。
斎藤 最初の打ち合わせでは「イントロとA・Bメロは洋楽っぽさや、メロディのきれいさを重視してください」というオーダーがありまして。他にも「頭にはちゃんとフックをつけて、おどろおどろしい雰囲気があって、這うようなベースラインを意識してほしい。そのうえで、ダンサブルにしてほしい」と。楽曲の構造の参考としては、例えばマイケル・ジャクソンの「Thriller」などの楽曲を提示していただきました。
――最初から狙いはかなり明確だったんですね。
斎藤 はい。この楽曲は完全にアニメの演出に合わせる形で、「ハピアラっぽくないほうがむしろ面白いので、そうしてほしい」と、かなり丁寧に説明いただきました。それをもとにタノウエが、この曲の作編曲を手がけた神田ジョンさんとやり取りをしていきまして。
タノウエ ジョンさんは難易度の高いオーダーのほうが燃えてくれるタイプの方なので、その意味でもジョンさんにお願いすることにしました。水島総監督からも僕からも何度かリテイクをお願いしたのですが、最終的にはハピアラらしさもある、ちょうどいいバランス感の楽曲にしてくれました。
――そういった楽曲イメージは、安藤さんにも共有されたうえで作詞に臨まれたのでしょうか。
安藤 そうですね。私はまず歌詞の初稿をハーフサイズで書いたのですが、そこから「もう少しこうしたほうがいいかも」といったやり取りが何度かあった結果、水島監督とオンライン会議で改めてすり合わせをして書き直しをしました。
――そのなかで、どのように変化したんでしょうか?
安藤 最初は、パーティーで「あの人いいよね?どうする?」みたいにキャッキャッしているイメージで書いていたのですが、「真秀が書いた歌詞なのでもっと照れ隠しも入れて、ギークっぽくしたい。だけどちょっと背伸びした感じも欲しい」というお話だったので、そのうえでワチャワチャ感を出すのになかなか悩んだ気がします。ただ、大元のコンセプトとして「真夏の夜の夢」というテーマがあったので、多少ぐちゃっとした感じでも夢なら何でも認められるという安心感があって。だからこそ、よりガチャガチャした歌詞にできたのかなと思っています。
――そしてこの「Look at me♡」は、安藤さんとともに各務さんも作詞にクレジットされています。
安藤 各務さんは英詞の部分を担当していて、私が書いた日本語の歌詞をまるっと英訳してもらいました。
タノウエ 水島総監督から、「アニメで流れる部分(1番)はすべて英詞にしたい」というご提案があったんですよ。それでまずは安藤さんにメロディに当てはめない形で大枠を作ってもらってから、斎藤が「各務さんに英訳をお願いしたら、面白いんじゃないか?」というアイデアを出して、ご快諾いただき携わっていただけることになりました。
各務 歌詞を手がけるのはまったく未知の世界過ぎて、最初にこのお話をいただいたときは「どうしよう?」となっていたんです。でもそんなとき、私が所属している事務所(株式会社S)の社長の佐藤ひろ美さんが、歌詞の書き方の流れをご自分の経験から教えてくださって。おかげで取りかかることができました。
――すごい方からの直伝ですね!
各務 はい(笑)。それに安藤さんからも「そこまで忠実に訳さなくても大丈夫」という伝言をいただいたので、「日本語の意味に近づけるのは、ちょっと無理かもしれない」と思ったところはメロディに当てはまることを優先するようにして。でも、全体を見たときにはちゃんとニュアンスが伝わるように考えていきました。
西尾 しかも今回、仮歌もかがみん(各務)が歌ったものだったんですよ!
――仮歌まで?
西尾 そうなんです。私が初めてこの曲を聴いたのはその仮歌の音源だったのですが、真秀ちゃんではなくかがみんとして歌っているのを聴いて、「制作サイドで携わるなんて、すごーい!」と思って(笑)。それを聴いて、レコーディングに臨みました。
――そのうえで、今度はそれを自分がりんくとして歌うにはどうしようか?とも考えつつ。
西尾 はい。英語の正しい発音も確認したうえで、「メロディ的に、ここの音が上がっているんだな」というのもちゃんと理解して。しかも、りんくは普段特殊なニュアンスや節回しをつけて歌っていて、それがりんくらしさでもあるので、どこまでやったら歌に合ったうえでりんくになるのかな?というバランスを探るところでは、少し悩みました。
――実際のレコーディングは、どのように進めていかれたのでしょう?
安藤 私も英語に関しては不安な部分が多いので、今回は各務さんの仮歌を頼りにしました。とにかくかっこよく、でもサビは明るくというイメージがあったので……私はニュアンスの部分だけを伝えて、英語のかっこよさや突き抜けていく感じを出す表現は、仮歌を聴いて練習してくれたメンバーのみんなに頼りました(笑)。
――各務さんは、今度は真秀として歌っていかなければいけないわけですよね。
各務 そうですね。ただアニメでの映像演出上、真秀が歌い始めるのはサビに入ってからなので、今回はアニメサイズだと真秀のソロパートが2ヶ所しかないんです。なので「真秀も歌ってるよ!」とアピールできるように、真秀らしさを込められるよう集中して臨みました。ただ、真秀のソロが、私が特に気に入っていた歌詞のところだったんです!
――そのパートは、どこですか?
各務 安藤さんが元々“シンデレラですけど”と書いてくださったところを、“私があなたのシンデレラですよ”というニュアンスかな?と思って“I am your Cinderella.”と訳したところです。アメリカでは「Your Queen.」とか「such a Cinderella!」みたいに、「超かっこいい!」と最上級のニュアンスを伝えるための褒め言葉として「Queen」や「Princess」、あとプリンセスの名前を使ったりするんです。それを使うことで元の日本語以上に強い意味を持たせられたお気に入りのパートだったので、ソロで歌わせていただけることになって……ガチガチに緊張しました(笑)。
安藤 でも“Cinderella”のしゃくり、めっちゃかっこよかったよ!
各務 あそこは曲を聴いたときから、ちょんって上げたいなぁと思っていたところなので、自分がイメージしたとおりに真秀としても歌えて、嬉しかったです。
――一方、西尾さんのレコーディングはいかがでしたか?
西尾 りんくは、普段は歌詞どおりにストレートに感情を表現することにしているのですが、今回はライブシーンの映像がゾンビになるのと歌詞の内容が恋愛要素ということで、小悪魔の意識を常に持って歌うようにしました。私は元々英語が苦手なので不安だったのですが、りんくの力を借りたことですごくいい感じに歌えたと思います。
安藤 特にりんくちゃんは歌い出し担当なので、より怪しげな空気を出さなくてはいけないのですが、そこでニヤリとした小悪魔ゾンビのりんくちゃんの表情を意識されて歌っているのをすごく感じました。
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