時にキュートに、時にパワフルに。スィートでポップなナンバーから、個性的なキャラクターを主人公にしたぶっ飛んだハードロックナンバーまで、楽曲ごとに変幻自在に色を変えるハコニワリリィ(以下、ハコリリ)の音楽。HanonとKotoha、個性の異なる2人の歌声が織り成す魅力が凝縮された1stメジャーアルバム『Lily’s Plage』が、リリースされた。ニューリリースのたび、新しい顔を見せてくれる彼女たちに『Lily’s Plage』に収録されたバラエティに富んだ書き下ろし新曲8曲と、11月に開催が迫った初ツアー“ハコニワリリィ Live Tour ~Lily’s Plage~”への意気込みをたっぷりと聞いた。
――“ハコリリ”ファン待望の1stアルバム『Lily’s Plage』がついにリリースされました。第一報は、リスアニ!WEBでもレポートをさせていただいた今年6月の1stワンマンライブ“Lily’s Garden Party”のステージ上でしたが、サプライズの重大発表に客席もすごい盛り上がりでしたよね。
Kotoha そうでしたね。ライブの夜の部だけの発表だったので、皆さんの「なんだなんだ!?」っていう空気感を、私たちも感じていました(笑)。
――そこでアルバムタイトルについても少し語られていましたが、改めて『Lily’s Plage』に込めたものを聞かせてもらえますか?
Hanon はい。『Lily’s Plage』は、私たちのユニット名にもなっているリリー=ゆりの花と、フランス語の “プラージュ”という言葉を合成していて、直接的には “ゆりの浜辺”という意味なんです。まずは1stアルバムなので“ゆり”は絶対に入れたくて。
Kotoha ねっ、絶対にね!
Hanon そして、私たちのリスナーさんには“ハコ船”という呼び名があって。船といえば海ですし、ファンの皆さんに、ハコ船で私たちを色んなところに運んでいってもらえたらいいな、という気持ちを込めて、このアルバムを聴いて“ゆりの浜辺”にみんなで向かおうね!という意味で、『Lily’s Plage』とつけました。
――ハコリリとファンの皆さんの夢と物語がリンクした、素敵なタイトルですね。
Hanon ありがとうございます!あともう1つプラージュという言葉には、レコードの録音部分を指す意味もあるんです。音楽のアルバムにも繋がる言葉なので、ぴったりだなって、2人で決めたんです。プラージュという言葉を見つけてくれたのはKotohaだよね。
Kotoha 色んなタイトル案が出たのですが、プラージュって響きもとてもきれいだし、意味もあるし、「これがいいです!」って私がかなり推しました(笑)。
――お二人はインディーズ時代にHanon×Kotoha名義では フルアルバム2枚とミニアルバムを既にリリースしていましたが、ハコリリとしての1stアルバムとなると、また気持ちも違ったんじゃないですか?
Hanon はい、インディーズのときとは全然違いますね。
Kotoha うんうん。
Hanon まず、全国のCDショップの店頭で皆さんが私たちのCDを手に取ってくださるというのもすごいことですし、特典をつけてもらえるのも嬉しくて!ものすごくこだわって2人で考えたんです!
――今回は2形態のリリースで、「コンプリート盤」と、いわゆる“通常盤”にあたる「初回仕様盤」では、特典もそれぞれ違いますしね。しかも「コンプリート盤」のほうはCDも2枚組という豪華な内容。『Lily’s Plage』本編に加えて、今お話にあったインディーズ時代の楽曲14曲が収録されたDISC2が同梱されています。
Kotoha そうなんです。「コンプリート盤」を手に取ってもらえたら、ハコリリのことを全部知ってもらえます!
Hanon TVアニメ『SDガンダムワールド ヒーローズ』第2クールのEDテーマ「コガネゾラ」やTVアニメ『阿波連さんははかれない』のEDテーマ「キョリ感」で私たちのことを初めて知っていただいて、興味を持ってくれた方にもお薦めできる作品になりました……って、めちゃめちゃ宣伝しちゃいたいです(笑)。
Kotoha ハコニワリリィ入門編に、本当にぴったりなので!
――よく色々なアーティストが、1stアルバムを「私の名刺代わりになる1枚」と例えますが、『Lily’s Plage』こそ、ハコ船に乗るためのチケットみたいな感覚がありますね。
Hanon そうなんです!私たちもそう思って、コンプリート盤の特典に「特製!ハコ船乗船カード」をつけちゃいました(笑)。これを持っていれば、もうハコ船の仲間なので!
――そんな『Lily’ Plage』本編は全14曲収録ですが、そのうち8曲が書き下ろしの新曲というのも豪華な内容ですね。音楽的なコンセプトは、どのように考えていきました?
Kotoha それぞれの楽曲のテーマだったり、こういう方向性で……というお話は、私たちからは特にしていなくて。
Hanon やっぱり……「こういう方向性です!」と決めてしまうんじゃなくて、ジャンルや曲調に囚われずに、色んな楽曲を歌うというのがハコリリらしさなんです。今回の『Lily’s Plage』もそこは変わらずなので、歌わせていただく曲数が増えたぶん、さらに私たちらしさというものが広がったかなと思います。
Kotoha ほんとにそうだよね!なのでアルバム制作が始まってからは、プロデュースをしてくださっているHoneyWorksのGomさんたちから、デュエット曲はこういう感じ、ソロ曲はこういうテーマだよっていうのが文字だけで書いてある一覧表のシートをいただいていて。Hanonちゃんと2人で「どういう曲がくるのかな?」と、ワクワク楽しみに待っていました(笑)。
――おそらく、『Lily’s Plage』を受け取る前のハコ船の皆さんも、お二人と同じ気持ちだったでしょうね。「今度のハコリリは、どんな曲を届けてくれるかな?」とワクワクしていたことと思います。
Kotoha だったらすごく嬉しいです。一緒にワクワクできるっていいですよね!
――ここからは、『Lily’s Plage』収録の新曲8曲について伺いますね。まずはリードトラックの「世界一の友人だったあなたへ」。もっと元気な楽曲が来るかと思いきや、意外としっとりと、切ないメロディが魅力的なポップチューンです。
Hanon この曲は……ちょっとタイトルだけ見ると結構不穏じゃないですか。
Kotoha 友達“だった”っていう過去形なのが……。
――タイトルだけだと、もしかしたら大事な友達を失ってしまった、とても悲しい曲なんじゃないか?と。
Hanon そうですそうです。タイトルが発表されたときもSNSで「不穏だな」とつぶやいてる方がいらっしゃったりして(苦笑)。バッドエンドかハッピーエンドか、どっちに転ぶんだろう?っていう。歌詞は、学生時代のお話になっていて、男の子と女の子がお互い友達だと思い合ってたけど、実はお互い好き同士で、最後の卒業の日にその想いをお互いに伝えようっていう曲になっています。
Kotoha なので、予想を裏切るハッピーエンドで(笑)。そして実は、今までの私たちの楽曲ともこう……繋がってるストーリーが。
――来ましたね、ハコリリナンバーお得意の裏設定!(笑)。
Hanon そうなんですよ。これ、アルバムの曲順的にも「キョリ感」のカップリングだった「マサキじゃないけど好き」に出てきたラブラブな2人が、付き合う前のお話なんです。
Kotoha って、レコーディングのときにGomさんが教えてくれました(笑)。
――だから曲順も繋がっている。
Hanon そうですね。ただ、「マサキじゃないけど好き」は男女の視点が分かれていたので、私が男の子、Kotohaが女の子をいつものように担当したんですけど、こちらは男の子視点と女の子視点が混ざり合ってる感じで。
Kotoha 特に私とHanonちゃんで歌い分けて、みたいなことは言われなかったんですけど、2人の中では男女を意識して歌ってたよね?
Hanon そうそう。意識しすぎない程度に、私は低めの声でKotohaちゃんはちょっと高めの声で。やっぱり、お互いの気持ちはちゃんとあるけど、言えてないだけという曲だから。歌声でも2人の気持ちがリンクしてる感じが出たらいいなと思いました。
――お互い告白できないけど好き同士でもやもや……という世界観は、HoneyWorksの「告白実行委員会」シリーズのテイストも感じますね。
Hanon たしかにそうですね。ストレートな青春恋愛ソングだし、アナザーバージョンもあるし、みたいな。
――2番の歌詞に“練習したセリフ飛んでるし”とあって、「告白予行練習」を思い出したりもしました。
Hanon ・Kotoha あぁ~!(笑)
Hanon ほんとですね。ハニワファンの方にもぜひ聴いてほしいですね。
――ハコリリには、本当に色々なテイストや世界観の楽曲がありますけど、こういうストレートな恋の風景を歌う時は、どういうことを意識しますか?
Hanon やっぱり、曲の登場人物がどういう感情かな?というのは、すごく意識しますね。レコーディングのときも、ここはちょっと照れてるなとか。Gomさんからも、しっかり演技チェックが入るので(笑)。
――楽曲的には、今までのハコリリナンバーと比べても、お二人のハモりやコーラスがすごくフィーチャーされているなと感じました。
Kotoha そうですね。この曲はあえて2人がメインになっているので、ユニゾンするように歌う感じですね。Gomさんも、「世界一の友人だったあなたへ」はフォークソング調にしたとおっしゃっていて。なおさら私たち2人のハーモニーがきれいに聴こえるんじゃないかと思います。
Hanon そうだね。いつもの恋愛ソングだとかわいさだったり、セリフっぽい歌い方が多いと思うんですけど、この曲はニュアンスがありつつも、結構、歌唱力を押し出したい、みたいな。
Kotoha 歌い上げる感じも意識したので、そこも気にしていただけたら嬉しいですね!
――爽やかさでいえば、「夏、透明な青に惹かれて。」もタイトル通り、夏の透き通った風を感じるお洒落な楽曲で、とても素敵です。
Hanon エモいですよね。
Kotoha いいですよね、夏って感じで。
Hanon このアルバムのジャケットというか……コンセプトに一番近いかなって思います。浜辺の感じもあって。今までのハコリリの曲にはなかったテイストかも。
Kotoha そう、爽やかでお洒落。だけど、歌詞の内容はちょっとシリアスというのがまた裏設定にあって。それもあって、ハコリリのかわいい感じや今までのお洒落さとはまた違うテイストになってるんじゃないかなと思います。
――さて、その気になる裏設定というのは?
Kotoha これもレコーディングのときに作詞・作曲をしてくださったドゥー(MARUMOCHI)さんにお聞きしたんですが、主人公は2人の女の子で、それが私とHanonちゃんという設定なんですね。で、私たちがまだ子供の頃に、おそらく女の子だと思うんですけど、もう1人幼馴染がいて。その幼馴染みがある日いなくなって、離れ離れになっちゃうんです。
Hanon でも、その理由も行き先も、2人とも聞かされてなかったから。
Kotoha 少し大きくなって、大好きな幼馴染みに会いに2人で旅に出よう!っていうお話が1番なんです。
Hanon YouTubeのハコリリチャンネルのほうで、私たちが主人公のMVも公開されているのでぜひご覧いただきたいんですけど……ずっと走ってるよね(笑)。
Kotoha そう、素敵なアニメーションでね。そして2番では、幼馴染みがいなくなった理由を私たちは、その女の子からの手紙に遠くに引っ越しちゃったんだよって書かれていたことで知るんですね。それを信じて旅に出たんですけど……実は、それは大人たちが書いた嘘の手紙で。
Hanon 手紙の書き方が上手すぎるから、旅に出た私たちも、いくら旅してももうあの子とは会えないんだってうっすら気づいてるんですけど……でも、それでも追いかけたいと頑張って追いかけていくと、あの子の“忘れないで”っていう波のような声が聴こえて、思い出にしたくないと、また走っていく……というストーリーなんです。
――切ないですね。
Hanon ただ……MVをじっくり観ていただくと、私たちが走っているシーン、最初と最後ではちょっと違和感がある……かも?
Kotoha うんうん!そこに気づくと、さらに切なくなっていただけると思います。
Hanon CDで歌詞カードを読んでもらうと、意味深なカギカッコもあるんですよ。“澄んだ青に惹かれるままに走り出せ”というフレーズも印象的だし。2人ともこの曲はエモくて大好き。歌詞に関しては、私たちも全部まだ解明できていないので、考察班の皆さん、ぜひ解読お願いします!(笑)。
――そして『Lily’s Plage』には、お二人のソロナンバーもたっぷり収録されています。Kotohaさんの「ハサミガール」は、お得意のウィスパーボーカルがスタイリッシュなサウンドにのった楽曲。浮気癖のある彼氏に疑惑を抱いた彼女の曲ですね。
Kotoha はい、そうなんです。最初はヤンデレな感じもあって、彼氏が好きで未練たらたらかと思いきや、ちゃんと自分から未練をチョキチョキして、断ち切ってるんですよ。だから、一見、暗く見えるけど、彼女にとってはすごく前向きな曲になっているなと思います。
――こういう女性の気持ちを表現するのって、難しくありませんでした?
Kotoha 難しかったです。レコーディングのときも“なんでだろうね”とか“不思議だね”とか、セリフっぽい感じで歌うフレーズが多かったので、スタジオで“なんでだろうね選手権”が開かれまして(笑)。作詞・作曲をしてくれたGomさんとメブキユウ(MARUMOCHI)さんが、「俺が言われたら一番ハッとする嫌なセリフの言い方を選ぼう!」と、私がいくつも歌った中から、セレクトしていただきました。
――ハコリリの男性ファンには、すごく刺さりそうですね(笑)。
Kotoha そうですね(笑)。逆に女性の方は、この未練を断ち切った女の子の強さを、すごく感じてもらえると思います。感情込めて歌ったので。
Hanon ほんと、許せないですから、この彼氏(笑)。
Kotoha ハコ船男子は、絶対にこういう人にならないで! 女の子を大切にしないと、チョキチョキされちゃいますからね。この子もぜひ次は、浮気しないいい男性に巡り会ってほしいです!
――Hanonさんのソロ曲「NEVER LAND」は打って変わって、ハードなロックテイスト。全力で歌い上げるかっこいいナンバーです。
Hanon はい。めちゃめちゃアニソンロック!って感じですよね。私自身もこういう曲は大好きなんですよ。最初にデモを聴いたときから、歌詞も前向きだし、みんなに元気を与えられる、意志の強さを感じてもらえる曲だと思ったので、レコーディングもあまり考えすぎず、歌詞の通りに全力込めて歌いました。
――“反撃の狼煙あげて さぁ向かえ 負ける気はしないぜ”というフレーズだったり、まぁ激しく戦ってますよね。何をイメージして歌いました?
Hanon 曲の主人公が何と戦っているかは明確にはされていないですけど、やはり歌うときは自分に照らし合わせました。例えば、自分の中の弱い自分だったり。普段生きていると、誰かの嫌な声が聞こえてきたり、何かと衝突することってあるじゃないですか。そういうのを超えて頑張っていきたいという、自分の気持ちもちょっとリンクさせながら歌いました。
――歌詞の中に、“航海の途中”とか“手を上げてよSailor”といった、ハコ船感のある言葉も出てきます。
Hanon そうなんです。多分、Gomさんとメブキユウさんがあえて入れてくださったんだと思います。ゆりの浜辺に向けて海に出て行く私たちと、ハコ船のみんなも一緒に行こう!という想いをリンクさせていて、行き先がNEVER LAND。NEVER LANDにゆりの浜辺があって、そのNEVER LANDが私たちの箱庭なのかも知れないですね。
Kotoha 曲調もHanonちゃんのパワフルな歌にすごく合っていて、まさにアニソンロックで、私もすごく好きです、この曲。
Hanon 熱いバトルアニメの主題歌になったらいいな!という曲です(笑)。
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