リスアニ!WEB – アニメ・アニメ音楽のポータルサイト

REVIEW&COLUMN

2022.08.03

Midnight Grand Orchestra、銀河を旅し新しい音楽体験を届ける――『Overture』VTuber・星街すいせい×作曲家・TAKU INOUEの魅力に迫る

Midnight Grand Orchestra、銀河を旅し新しい音楽体験を届ける――『Overture』VTuber・星街すいせい×作曲家・TAKU INOUEの魅力に迫る

星街すいせいとTAKU INOUE、2人の出会い

今年3月に突如結成がアナウンスされ、 人気クリエイター同士のユニットとして話題となっていたMidnight Grand Orchestra。彼らが1stミニアルバム『Overture』をリリースした。

Midnight Grand Orchestraは、ホロライブ所属のVTuber・星街すいせいと作曲家のTAKU INOUEによる次元を超えた音楽ユニット。TAKU INOUEといえば、数々のゲーム/アニメに楽曲提供する本誌読者にはお馴染みのサウンドプロデューサーで、「Radio Happy」や「ミラーボール・ラブ」「クレイジークレイジー」「さよならアンドロメダ」といった「アイドルマスター」シリーズの楽曲はクラブでもアンセム化している。2018年にバンダイナムコスタジオを退社してフリーの作曲家/アーティストとなり、2021年にはデビューEP『ALIENS EP』も発表。Midnight Grand Orchestraでは作編曲と作詞の一部を担当している。

TAKU INOUE

TAKU INOUE

彼の最大の特徴は、音楽的実験とポップソングとしてのキャッチーさを両立した楽曲が非常に多いこと。フューチャーベース特有の不規則なシンセとポップス由来のメロディが1つになった「クレイジークレイジー」や、イギリス・ロンドンのハイパーダブ~ブリアル辺りを連想するダブステップ特有の揺れるワブルベースを使った切ないバラード「さよならアンドロメダ」など、様々な実験を盛り込みつつポップな楽曲を作る名手として知られている。

一方、星街すいせいはメンバーのYouTubeの総チャンネル登録者数が6,000万人を超える人気VTuberグループ・ホロライブの歌姫。ホロライブは精巧な3Dモデルを使ったクオリティの高いバーチャルライブでも知られている。2018年にキャラクターデザインや動画編集、Live2D設定まで自身でこなす無所属の個人勢として活動をはじめ、ホロライブを運営するカバーの音楽レーベル・イノナカミュージックに加入。その後、ホロライブに転籍して活動を続けており、Midnight Grand Orchestraではシンガーと作詞の一部を担当。

星街すいせい

星街すいせい

彼女の最大の魅力といえるのは、声1つでガラッと景色を変える力強く伸びやかな歌声と、「曲のピークをどこに持ってくるか」を本能で察知しているように感じられる豊かな表現力。言うべきことをはっきり言う凛とした佇まいも相まって、女性人気が高いメンバーとしても知られている。昨年9月には1stアルバム『Still Still Stellar』がオリコンウィークリーランキングの6位を記録。同年10月には初のソロライブ“Hoshimachi Suisei 1st Solo Live “STELLAR into the GALAXY” Supported By Bushiroad”も成功させた、V界を代表するシンガーだ。

そんな2人の交流が始まったのは昨年のこと。

TAKUのデビューEP「ALIENS EP」のリード曲「3時12分」の制作に際して、彼が星街に「ぜひボーカルをお願いしたい」とDEMOを作成していた最中に、彼女からもTAKUへ「Still Still Stellar」を制作してほしいとオファーがあり、お互いの楽曲にそれぞれ1曲ずつ参加することとなった。

TAKUの「ALIENS EP」は宇宙のどこかにあるクラブでの一夜を時系列準に表現した作品で、「3時12分」は中でもクラブのピークが過ぎ始めた頃の様子を通して、様々な人の人生が行き交うクラブの魅力を表現していた。音楽的には全編を通してジャズテイストが色濃く出ており、きれいな低音が印象的な星街のボーカルには、「VTuberにもこんなにもすごい歌手がいたのか」と多くのリスナーが驚くこととなった。

星街のアルバム『Still Still Stellar』では、TAKUが「Stellar Stellar」の作編曲を担当。この曲ではアカペラの歌始まりで彼女の歌声を際立たせつつ、サビでバーンと音が広がるビッグバンドジャズ風のゴージャスなアレンジを追加。“そうだ 僕がずっとなりたかったのは 待ってるシンデレラじゃないさ 迎えに行く王子様だ だって僕は星だから”という星街自身による歌詞も相まって、彼女の代表曲の1つとして知られている。そんな共作を経て、「さらに音楽性を追究しよう」と始まったのが「Midnight Grand Orchestra」だ。

Midnight Grand Orchestraが新たに切り開いていく世界観

ユニットとして楽曲作りに取り組んだ結果だろうか、Midnight Grand Orchestraの楽曲はこれまで共作した2曲とは大きく異なっている。一番の違いは、2人の魅力をよりフラットに伝える作風になっていること。「3時12分」と「Stellar Stellar」はそれぞれ「ゲストシンガー」「楽曲の主役」として星街の歌声を前面に押し出す作風だったのに対し、Midnight Grand Orchestraではトラックと歌とがどちらも前に出るミックスが施されていて、リード曲「SOS」でもシンセベースやストリングスが歌声と正面からぶつかり合っている。つまり、どちらかではなく「どちらも主役である」ということ。わかりやすいサビを用意しない「SOS」でのクラブマナーの楽曲構成も、歌と楽器がパートごとに主役/サポート役を入れ替わりながら進む「Allegro」の楽曲構成もこのユニットの雰囲気を伝えているようだ。

一方で、お互いの共通点が感じられる要素もある。特に印象的なのは、全体的に「夜」や「星」「宇宙」などを連想させる世界観で貫かれていること。元々TAKUの楽曲は「夜」や「宇宙」をモチーフにしたものが多く、わかりやすいところでは、「アイドルマスター」シリーズの「Miracle Night」に“踊ろうよ みずがめ座のダンスホール”という歌詞が出てきたり(MC TC名義)、デビューEPの楽曲「Club Aquila」が「わし座のダンスフロア」を描いたものになっていたりする。星街も、自身の名前と所縁がある「星」や「彗星」「宇宙」を様々な楽曲/アートワークに散りばめてきたシンガーで、昨年のソロライブ“STELLAR into the GALAXY”の演出にも、その要素が反映されていた。今回のユニットでは、アートワークやMVを通して銀河を旅する2人の様子が描かれている。

アルバムは旅の始まりを表現するような壮大な楽曲「Never Ending Midnights」でスタートすると、前述の先行シングル「SOS」へ。ファンなら歌詞に登場する“ランペイジ”が、星街が今年4月に行われたVTuberの『Apex Legends』大会『V最協決定戦』(常闇トワ・湊 あくあと「Startend」として出場)で愛用していた銃の名前(ランページ)と同じだと気づくかもしれないが、彼女の配信によるとどうやら偶然の出来事だったそうだ。

3曲目「Allegro」はドラムンベースを基調にストリングスやギターなどを加えた華やかなポップソング。ストリングスに合わせて軽やかにステップを踏む歌声やテクニカルなシンセソロが印象的な楽曲で、タイトルの「Allegro」はアートワークやMVで、星街が手にしている銃の名前。4曲目「Rat A Tat」はダフト・パンクやジャスティスらを髣髴とさせるフレンチタッチのエレクトロファンク。インタールード「Tuning (Interlude)」を挟んで、6曲目「流星群」はヒップホップビートに乗った柔らかなピアノとメロウな星街の歌声が、ふと気づくと遠い場所に来ていたときのことを連想させる楽曲になっている。これは音楽でも人生でも、多くの人々が経験する感覚かもしれない。

アルバムの最後は、旅の余韻溢れる楽曲「Highway」。『Overture(=序曲)』というタイトル通り、全7曲にユニットの魅力を凝縮したイントロダクション的な作品になっている。

技術の進歩により、2次元/3次元の壁を越えて様々なアーティストのコラボレーションが増えつつある昨今。人気サウンドプロデューサー&VTuberが次元を超えてタッグを組んだMidnight Grand Orchestraの音楽には、未知の惑星や銀河を手探りで旅していくような世界観を通して、今の時代の新しい音楽体験にリスナーを連れて行ってくれそうなワクワク感がある。8月20日(土)には、ユニットによる1st バーチャルライブ“Overture”の開催も決定。情報解禁を記念して行われたTwitterのスペースでの情報によると、ステージや演出にこだわったリッチな体験が楽しめるものになるという。今後の展開についても、今から非常に楽しみだ。

TEXT BY 杉山 仁


●リリース情報
Midnight Grand Orchestra 1st ミニアルバム
『Overture』
発売中

■mora
通常/配信リンクはこちら
ハイレゾ/配信リンクはこちら

【完全生産限定盤(hmng Ver.)[CD / Tシャツ付(illustration: hmng)]】

品番:TFCC-86867
価格:¥5,500(税込)

【完全生産限定盤(にゃもふぇVer.)[CD / Tシャツ付(illustration: にゃもふぇ)]】

品番:TFCC-86868
価格:¥5,500(税込)

【通常盤(CD)】

品番:TFCC-86869
価格:¥1,980 (税込)

<収録楽曲>
01. Never Ending Midnights
02. SOS
03. Allegro
04. Rat A Tat
05. Tuning (Interlude)
06. 流星群
07. Highway

●ライブ情報
Midnight Grand Orchestra 1st LIVE「Overture」

開催日:2022年8月20日(土)
OPEN 18:30 / START 19:00

チケット価格:¥4,500
会場:Midnight Grand Orchestra Special Stage
主催:VIA/TOY’S FACTORY , hololive production

チケット詳細はこちら

【チケット販売期間】
2022/7/13(水)19:00-9/9(金)23:00

【アーカイブ視聴期間】
2022/9/9(金)23:59まで

関連リンク

Midnight Grand Orchestra Twitter
https://twitter.com/m_g_orchestra

Midnight Grand Orchestra YouTube
https://www.youtube.com/channel/UCnVbtCwr-5LXxUlGxsgD7sQ

Overture特設サイト
https://midnight-grand-orchestra.com/

SHARE

RANKING
ランキング

もっと見る

PAGE TOP