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INTERVIEW

2022.03.09

【インタビュー】紡いできた縁がもたらした、無限大で未知数な未来に向けたデビュー曲。 青山吉能「Page」リリースインタビュー

【インタビュー】紡いできた縁がもたらした、無限大で未知数な未来に向けたデビュー曲。 青山吉能「Page」リリースインタビュー

昨年12月に“青山吉能 SPECIAL LIVE 2021 よぴぴん家(以下、よぴぴん家らいぶ)”でアーティストデビューを発表した声優・青山吉能が、3月9日にデビュー作「Page」をデジタルリリースする。これまで多かった歌い上げるようなアプローチとまた違う、サウンドや自ら紡いだ歌詞に素直に寄り添った歌声を聴かせてくれている。

本稿では、そんな青山に本作はもちろん、実は前述のライブがきっかけだったというアーティストデビューまでの経緯などについてインタビュー。苦悩や葛藤も含め、彼女に素直に語ってもらった。

偶然が重なりに重なって、辿り着いた“アーティストデビュー”という地

――まずはデビューが決まるまでの経緯を、改めてお教えいただきたいのですが。

青山吉能 まず去年の1月に“鷲崎健のアコギFUN!クラブ(以下、アコギFUN!)”に出演せていただいたことが、ライブをやるきっかけになりました。以前は週1くらいコンスタントにライブの機会があったのに、あるときからパタッとなくなって……人前で歌うことが自分の中で当たり前じゃなくなっていたなかで出させていただいたら、満ち溢れるエネルギーに感動して!すごく楽しかったので「ライブをやりたいな」と思ったんです。でもそのときの自分には、ハコの押さえ方もメンバーの集め方もわからなくて……。

――それが実際形になるまでの、ターニングポイントはなんだったんですか?

青山 3月末頃にTwitterの通知を見ていたら、Wake Up, Girls!のときにお世話になったギタリストの木原良輔さんがフォローしてくださったのを見つけまして。「時間が経ってからだと気まずいし、今しかない!」と思ってDMで相談させていただいたことがきっかけで、ライブが実現に向かって動き始めたんです。しかもその直後、たまたま木原さんがテイチクさんとお仕事をご一緒される機会があったみたいで。

――それもまた偶然。

青山 そうなんです。それで、仕事後ご飯に行かれたときにDMのことを思い出して私のライブについてテイチクさん相談してくださって、そのときはお酒の勢いもあって「いいんじゃないですか!」という流れになったそうなんです。それで4月の頭には「一旦落ち着いて話そう」となり……。

――気づいたらだんだん話が進んでいた。

青山 はい。それで「ライブをやるならオリジナル曲があったらいいよね」という話になり、「せっかく曲を作るなら、リリースしない?」という話になって「リリースするってことは、ソロデビューだね」と広がって……という形で、ソロデビューさせていただくことになったんです。だから最初は「ど、どうしよう?」っていう、驚きと戸惑いもありました。

――ただ、元を辿ればやはり、青山さんが一歩踏み出したことがきっかけだったわけで。

青山 でも本当に、色んな方の助けがあってのことというか。縁が縁を呼んでここまで繋がってこられたので、それには本当に感謝しかないですね。

――ちなみにそれ以前に、音楽をやってみたいと思ったことはあったのでしょうか?

青山 実はなくて。声優デビューのときから、声優の仕事にしか興味がなかったんですよ。しかも声優さんってアニメのアフレコだけじゃなくて、朗読とかキャラクターソングとかやれることがたくさんあるから、それで十分だったんです。でも“アコギFUN!”で私自身「やっぱり歌うって楽しい!」と感じましたし、受け取った皆さんも同じ温度で「楽しい!」と思ってくださるという奇跡が、たまらなく嬉しくて。それで「ライブ、やってみようかな」と思ったんですよね。

――最初の一歩を踏み出す原動力は、ファンの方の反応だったんですね。

青山 そうなんです。それまでになかった感情を、ライブやファンの皆さまの反応のおかげで得られたので……自分でも未だに、なんだか不思議です。

――実際の開催にあたっては、どんな空気感にしたいかは明確にして進まれていったのでしょうか。

青山 そうですね……やっぱりeplus LIVING ROOM CAFE&DININGさんという、すごく雰囲気のあるお洒落な会場でやらせていただく、というのは大きくて。その空間で浮かないようなお洒落さを作りたいという気持ちはあったと思います。あとは、「好きなことをやろう」ということですね。

――「好きなこと」ですか?

青山 はい。今までは「アニソン好き=コールができて跳べる曲しか求めてないのでは?」という先入観があったんですよ。「バラードなんか歌ったら、みんなトイレ行っちゃうんじゃないか?」みたいに(笑)。だからそれがすごく怖くて、1人でイベントをやらせていただく機会があってもそういう曲はずっと避けてきたんです。でも、あの会場だとコールできるような曲だと浮いちゃううえに「お洒落な空間にしたい」という気持ちからも外れちゃうと思ったので、「じゃあもう、今までできなかった曲ぜーんぶ詰め込んじゃおう!」と決めたんです。

ここでも偶然の出会いが!紆余曲折を重ねて生まれたデビュー曲「Page」の裏側

――ただ、今回デビュー作としてリリースされるのは、そのとき歌われた「たび」とは違う曲、「Page」なんですよね。

青山 そうなんです。どちらも私が作詞をさせていただいたんですけど、「たび」はあの日に伝えたかった気持ちをばーっと詰め込んだ「私のことを知っている人向けの同人誌」のような曲なのに対して、「Page」は「商業誌」といいますか。色んな人に届いて刺さればいいな……という気持ちを込めて歌詞を書いた、これからの私のスタートを描いた曲になっています。ただ、「Page」がデビュー曲に決まるまでには、色々なことがありまして……。

――紆余曲折が。

青山 はい。この曲のほかにもすごくたくさん候補曲をいただいていて、10~11月の間にプリプロまで終えたような曲がいくつかあるんです。でもライブを観たスタッフさんたちが、そこでの私から今まで感じたことのなかった一面を感じられたようで、改めて曲を集めてくださったんですよ。

――そのなかから改めて選んだのが、この曲ということですね。

青山 そうなんです。この曲のデモが、すごく刺さりまして。しかもあとからクレジットを見たら、私が尊敬してやまない早見沙織さんのデビュー曲「やさしい希望」を書かれた矢吹香那さんが作曲してくださっていたんですよ!だから「絶対これがいい!」と思って……そのへんの会議室で転がって(笑)。

――地団駄を踏んで(笑)。

青山 はい(笑)。それが年明けのことだったので、そこから急ピッチで色んなことを改めて進めていった結果、スタッフの皆さんの協力もあってなんとかリリース日に間に合わせていただけて。矢吹さんの曲で私もデビューできるという……涙が出るくらい、嬉しい限りです。正直、何に一番時間がかかったかって言ったら、歌詞なんですけど……。そもそも、「たび」のときに「もう一生歌詞は書かない!」って心に決めていたんですよ。

――それくらい大変だった?

青山 はい。自分のことを大っ嫌いになりながら歌詞を書いて、「歌詞なんて書くから、素晴らしくない人間であることが露呈されちゃうんだ」という気持ちになったりもしたので……。やり取りもすごくピリピリしていたんです。話し合いながらわーっと書いて提出したら「まぁまぁまぁ、良いとは思うけど……」と言われて「は?『良いとは思うけど』?良いに決まってんだろー!(※机バンッ)」くらいに思うようなときもあって(笑)。そこからお互いに歩み寄りながら形にしたのが「たび」だったんです。

――今回は作詞に取り組むにあたって、まず曲からどんなイメージを受けましたか?

青山 初めて聴いたときに“光”や“風”、“未来”“希望”みたいなイメージが浮かんで。逆にマイナスなことがまったく浮かばない、すごく爽やかな曲だなと思いました。ただ私自身結構ネガティブだったり、言わなくていいことを言っちゃったりとあまり爽やかな面がないところを自覚していたりするので、「どうしよう、私に“光”や“希望”みたいなボキャブラリーなんてないのに!」という部分では苦しんでいた記憶があります。

――そこから実際作詞をされるなかで、どんなことを感じられましたか?

青山 出来上がった今だから言えるんですけど、最高の歌詞になったなぁって、今はほっと安心しています。ただ、そこに至るまでがすごく大変だったんですよ……。

――また紆余曲折が(笑)。

青山 はい。「最悪でも1月末締切」というお話だったんですけど、残り3日くらいになっても全然ダメで、一文字も書けず……ただ「たび」のときもだったんですけど、不思議なもので、1つ閃くとばーっと書けちゃうところもあって。今回も生まれるまですごく苦しかったんですけど、その閃きに辿り着いてからは早かったように思います。

――その閃きって、何がきっかけで辿り着けたんでしょうか?

青山 ライブを思い出して「お客さんだったらどういう言葉を、ライブで言ってほしいかな?」ということを考えたときに閃いたのを、はっきり覚えてます。しかも「Page」は1回提出してからも若干のディスカッションはありましたけど、ほぼほぼ原案通りになったんですよね。ただ1ヵ所、サビの“今日を忘れず進め”というフレーズは、実は1回レコーディングしたあとに変わりまして……。

――レコーディング後に?

青山 そうなんです。そこは元々「真っ白なPageに、今日は何を書くかな?」みたいなイメージで、“今日も心を綴じる”と書いていたんです。だから自分でも歌うまでは「すごくナイスな歌詞だな」と思っていたんですけど、実際歌ったら「あれ?想像通りにならないぞ」と。

――たしかに、音だけで“とじる”と聴くと……。

青山 そう。「心を閉じる」という意味に捉えられちゃうかもしれないと感じて、お風呂に入っているときに「どうしよう、今更歌詞直したいって……でもこれで出ちゃうのは嫌だな!すごく嫌だーーー!!!」って思いながら考えて出てきたフレーズなんです。

――そのフレーズは、どこから湧いてきたんでしょうか?

青山 「ライブのMCで、私いつもなんて言ってたかな?」と考えて、出てきたフレーズなんです。やっぱりライブって、かけがえのない思い出じゃないですか?しかもやる側も来る側も、色んな人の十人十色の思い出が詰まっているわけで。「それってとてもすごいことだし、絶対忘れちゃいけないよね!」と思って、歌詞にしたんですよ。

――それ以外にも、歌ってみて初めて感じられたことがあった部分はありましたか?

青山 「自分で書いた歌詞を歌うのって、こんなに辛いんだ」とも思ったんですよね。

――辛さがあった?

青山 はい。今まではいただいた役や台本、歌の中で、自分がどういうキャラクターを作れるかというお仕事で。例えば元々「あいうえお」という台本があったら、「『あいうえお』で、いかにその役柄を表現できるか」を生業としていたんです。でも今回はその「あいうえお」自体も、それをどう表現するかも自分で決められちゃうんですよね。それもまた、初めての経験で。これまでは音響監督さんからの指示もあったり、いわばそのものに対する責任感をみんなで分担していたわけですよ。でもこの歌に対する責任は私が負わないといけない……となったときに「ひえー!」となって。それで悩んでいたときも、正直ありました。

――「本当にこれが正解なのか?」と。

青山 そう。しかもそれがほかの誰にもわからないから、自分で決めないといけないんですよね。そういうところへの戸惑いもありながら、「自分がやりたいこと」を見つめ直す、すごく素敵な機会になったと思っています。

――それを経て、どんなビジョンを特に大切に、今回歌われていったのでしょうか。

青山 できるだけ、自分に嘘なく伝えられたらいいな……という想いをぶつけながらでした。逆に、「音楽としてこうあるべきだ」というのはディレクターさんにお任せしまして。私の100パーセントをぶつけたあとに音楽の面から意見や提案をいただいて、均衡点を見つけて……お互いが100パーセント納得できる形で、今回やりきることができました。

――実際辿り着いた歌声は、歌い上げる印象が多かったこれまでのものと違うアプローチの、非常に自然体のものになっていますね。

青山 そもそもそれくらい私のことを知ってくださっている方がいること自体がすごいことだと思うんですけど、もし元々「青山吉能の歌声はこう」というイメージをお持ちの方を、良い意味で裏切って唸らせられたらすごく嬉しいですね。ただ、最初から「新しいところをみせてやろう!」と考えていたわけではなくて、完全に曲に寄り添ってこの歌い方になったんですよ。それを通じて何を受け取るかは聴いてくださる方の自由なので、お好きに楽しんでいただけたら何よりです。しかもそれを、最近私を知ってくださった方への名刺代わりになる曲として作れたことも、嬉しいことですね。

――曲はもちろん、ジャケットのイメージにもその歌い方はすごく合っていますし。

青山 そうですね。でも実はこの写真も去年の9月か10月には撮っていたものなので、それとマッチするのも偶然で……ライブをやろうとしたときからそうですけど、人生って、縁と運だなぁと思いました(笑)。本当にありがたいですね。

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