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INTERVIEW

2021.06.30

八木ましろと菅まどかによるユニット、Gothic×Luck“夢の中の物語”をコンセプトに制作された2nd EP『おやすみ おはよ』インタビュー

大人でも子供でもない、ゴクラクが表現する女子の繊細な心象風景

――続いての「棘かくし」は、可憐かつアンニュイな雰囲気。この曲の作詞をしたのは、本作の通常盤ジャケットのイラストを手がけた漫画家の森下suu先生ですが、これはどのような経緯で?

八木 私が森下suu先生の大ファンで、そのことをスタッフさんにお話したのがきっかけで、ご縁を繋いでくださったんです。ジャケットのイラストは私たちをイメージして描き下ろしてくださったのですが、まさかそれに加えて歌詞まで書いてくださるとは思っていなかったので、とにかく嬉しくて。言葉が抽象的というか、suu先生の世界観も感じられるし、少女マンガ家さんだからこそ、女の子の気持ちが如実に描かれている歌詞だなと思いました。

 私が好きなのは、“昨日のごめん 昨日はごめんね”を二人で分け合って歌っているところ。私としいちゃん(八木)が会話している雰囲気もあったりして。“今はどっちが やさしく聞こえる?”も、この一文だけで情景が思い浮かぶところがすごいなと思ったし、歌詞が素晴らしすぎて、そこにどんな声を乗せていくべきかたくさん悩みましたが、自分を出して歌えたと思います。

――八木さんは森下先生の作品のどんなところに魅力を感じるのですか?

八木 森下suu先生はユニットでマンガを描いてらっしゃる方で、作品の幅がすごく広くて、作品ごとに全然作風が違うし、絵柄も作品によって印象が変わるんです。「本当に同じ人が描いているのかな?」と思うぐらいレパートリーの幅がすごいんです。しかも毎回新しい作品を読むたびに、「マンガでこんな表現ができるんだ!」って驚かされることが多くて。特に今連載している「ゆびさきと恋々」というマンガは、登場人物の心情を言葉だけでない部分でも表現していて、マンガからなぜか空気感と間が伝わってくる、不思議な感覚の作品で。ぜひ皆さんに読んでいただきたいです。

――そういった絶妙な空気感は、この曲にも表れているのかなと思いました。二人で歌うことによって意味が生まれるような歌詞にもなっていて。

 二人の声が重なり合うところ、なんとなくですが以前より綺麗になった気がしています。特に落ちサビなどは二人とも心がけて歌いました。

八木 この曲に関しては、レコーディング前から、お互いがソロで歌った音源を送りあって、二人の歌声をすり合わせていったんです。相手がどんな歌声で歌っているのかを研究して、よりいいなと感じたほうの歌い方に寄り添うように歌うようにして。そこからレコーディング当日にディレクションもしていただいたので、すごくいい感じに歌えたと思います。

――ジャケットのイラストと合わせて聴くことで、より世界観に浸れるような曲だと感じました。

 この曲、実はリリックビデオも作っていただいていて。森下先生にも協力していただいて、ジャケットのイラストを描いている過程の映像がMVの中に使われているんです。それがすごくエモいので、ぜひ観てほしいです!

――ちなみに今回はイラストも衣装も制服風なので、その意味で少女性みたいなテーマもなんとなく感じたのですが。

 意識はしてなかったですけど、繋がる部分もあるのかなって思います。衣装をデザインしてくださった森下さんは流石だなあと思いました。

八木 今回の衣装は、森下先生のイラストを元にデザインしていただいたんです。

――今までの衣装はゴシック風が多かったですが、制服風の衣装はいかがでしたか?

 めちゃくちゃ好きです! (高校を)卒業してからまた制服を着られたのがすごく嬉しくて。まだ(卒業から)そんなに経ってませんけど(笑)。

八木 私は学生時代ずっとブレザーだったので、セーラー服を着るのが初めてで、新鮮でした。(アーティスト写真では)私は髪を二つ結びにしているので、幼い印象を受けると思うんですけど、私のほうが膝枕をしてあげているっていう(笑)。

 撮影のときは、ずっとくっついていた気がします(笑)。

――そして4曲目の「夢の中のストーリー」は、配信シングル「桜てのひら」に続いて井上トモノリさんが書き下ろした、渋谷系を彷彿させるかわいらしいポップチューン。

 「桜てのひら」とはまた全然違った、「夢の中のストーリー」という曲名通りの楽曲で、かわいらしいなかにも切なさやメッセージ性の強い部分があったりして。誰でも「この夢がずっと続けばいいのに!」と思っていても、「わー!ここで目が覚めちゃった……」って思うことがあると思うので、そういう気持ちも思い出しつつ、キュンキュンするような曲だと思います。

八木 この曲は、1番のBメロはほぼ菅ちゃんが歌っているんですけど、“キラキラ降り注ぐ光”のところだけ私が歌っていて、2番ではそれが逆になっているんです。その“キラキラ降り注ぐ光”のところに菅ちゃんのささやき声が入っていたりして。あと、サビの“終わってしまわないように”とか“おやすみ今日もまた”のところも、歌声の間に自分たちのささやき声が混ざっていて、夢の中の幻想的でほわっとした雰囲気を表現しているのがすごく好きです。

――まさにドリーミーな雰囲気が演出されていますが、加えてお二人の歌声の胸キュン感がすごいなと思って。

 “乙女”になって歌いました(笑)。「夢の中でしか会えないのか……」とか、すごくキュンキュンする気持ちで歌わせていただいて。夢の中に知っている人が出てくると、別に普段は何も思っていなくても、意識しちゃうことがあると思うんですよ。自分的には、Dメロの“次の朝が来て ナガイユメだと気が付いた”のところは溜めて歌うようにしてみたり、歌詞を表現できる様に頑張りました。

八木 この曲には“逢いたい”という言葉がたくさん出てくるんですけど、自分がその人に夢の中で会いたいのではなくて、その人の方も私に会いたいって思ってくれたらいいなっていう気持ちも描かれていて。たしか平安時代の考え方だったと思うんですけど、夢で好きな人が出てきたら、それは相手が自分に会いたがっているっていう考え方があって。そういうことも胸に留めながら歌いました。

――続いての楽曲「天国の踊り場」は、ボカロPとしても知られる瀬名航さんが提供したナンバー。ポップで浮遊感があるけど、胸を締め付けられるような切なさもあって、個人的に今回のEPで一番好きな曲です。

 この曲は音源だけのデモを聴いた段階で綺麗な曲と思ったんですけど、その後に歌詞と仮歌が入ったものをいただいて聴いたら涙が止まらなくて。きっとこの歌詞は、聴く人によって色々な思い出とか誰かのことが思い浮かぶと思うんです。私も、自分の昔のことを思い出しながらレコーディングしたので、感情を自然に乗せることができました。でも、悲しさだけじゃなくて、最後には前向きになれる曲なので、そこも素敵だなって思います。

八木 他の曲は結構前を向いていることが多いのに対して、この曲は後ろを振り返って、そこからまた歩いて行こうと思わせてくれるところがあって。歌詞に“子どもじゃないから”という一文があるんですけど、私には強がっているように聞こえて。「大人にならなくてはいけない」って自分に言い聞かせているように聞こえるんです。例え自分が弱くても、辛いことを乗り越えていけなかったとしても、「大丈夫だよ」って優しく背中を押してくれるような曲だと思います。

次ページ:念願の初ツアーと、その先に広がるさらに大きな夢に向けて

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