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INTERVIEW

2021.06.30

May’n、15年を経て辿り着いた想いとは――。大石昌良や向井太一、Rin音ら提供曲を収録したニューアルバム『momentbook』リリースインタビュー

May’n、15年を経て辿り着いた想いとは――。大石昌良や向井太一、Rin音ら提供曲を収録したニューアルバム『momentbook』リリースインタビュー

その高い歌唱力でアニソンシンガーとしての名を轟かせているMay’n。だが以前からタイアップとしてのアニソンだけではなく、自身のアルバムやシングルで良質なポップスを贈り出してもいた。そんなMay’nが幾つかの契機を得て、アーティストとしての実力を発揮したのが今作『momentbook』だ。自身で綴った歌詞も、日本の音楽業界で活躍するクリエイターたちに依頼した楽曲面でも、ノンタイアップの新曲たちは、May’nのパーソナルな部分をスタート地点に、聴く者に共感とグルーヴを感じさせる良質なポップス集となっている。ライブで培ってきたパフォーマンス力=表現力も武器として、May’n史上、控えめに言っても最高なアルバムに込めた思いを、May’n自身にさらけ出してもらう。

「部長」としてみんなと寄り添えるような音楽を作りたい

――まず、今回のアルバム『momentbook』はどのようなコンセプトからスタートしましたか?

May’n この15年間、ライブも含めてたくさんの音楽をさせていただいてきたなかで、ファン=部員、May’n=部長として音楽をするのが一番自分らしいというところに辿り着いた、というのがあって。小さい頃から「部長」として生きてきた自分を思い出したというか。

――小さい頃からですか?

May’n 部活もそうですし、あとは学級委員長とか。「男子ーっ!」って言っているような(笑)。

――ああ(笑)。

May’n 合唱コンクールとかもすぐに張り切るタイプだったので。「みんな! 河川敷で練習!」みたいな。

――自分から率先して動くけれども、みんなも動かさずにいられないタイプだったんですね。

May’n そうですね。「みんなで優勝するよ!」みたいなことを言っていました。そういう自分をふと思い出したことで、“自分らしい自分”に気づかされたんですね。10代でアーティスト活動をし始めたときはほとんどのファンが自分より年上、という状態だったので、みんなを引っ張っていくという感覚はなかったのですが、自分自身が年齢を重ね、キャリアを重ねることで、みんなにもっとエールを送るような、背中を押してあげられるような音楽を届けていきたいと思うようになりました。そういったなかでレーベル移籍があり、今のプロデューサー(田中宏幸)さんから「もっとMay’nのパーソナルな部分を音楽性に込めることも大事ではないか」という話をしていただいたんです。

――田中プロデューサーとはもう10年来の付き合いになります。

May’n プロデューサーさんからは、「普段のMay’nをもっと色々な人に知ってほしい」というような言葉もいただきました。今までは自分のパーソナルな部分や人生を音楽に込めたいという思いはなくて、ステージに立ったらMay’nとしてのスイッチが入るみたいな音楽活動だったんですよね。でも、『15Colors』でも「パーソナルな部分を出してもいいのかな」とふわっと考え、移籍したタイミングでお世話になってきた方にそういう話をさせていただいたことで、自分自身が今感じている思いを歌にしていきたいとは強く思うようになりました。その意味で今回の『momentbook』は、『15Colors』から繋がっている感覚はあります。

――たしかに、“15Coloers”を冠した3枚の企画ミニアルバムをリリースする際も、コンセプトの1つとしてMay’nのパーソナルな部分を出すということは仰っていました。ただ、『15Colors』たちは3枚それぞれにテーマも設けられていたので、今回は“パーソナル”を前面に押し出しながら制作した場になったかと思います。共にその役割を担ってくれたクリエイターの方々は、どのような意図で選ばれていったのでしょうか?

May’n まず、今の私がお願いしたい方々をリストにしたんですけど、全員にOKしていただけたことにはすごくビックリしています。そこで1つ夢が叶ったような感覚でしたね。運命的なものを感じました。向井太一さんとRin音さんはここ最近の私がすごくハマっている新世代クリエイターの方なんですけど、まずトラックがあり、そこからメロディを作られるという形で作曲をされるお二方だったので、自分が作曲するうえで「こういう音楽作りってあるんだ!?」と、とても刺激をもらいました。それに、(シンガーとして)表に出られている方でもあるのですごくボーカル力もあり。お二方とも自分でデモを歌われていたのですが、それがすごく素敵だったんですよ。だから、そこでも刺激を受けながら歌詞を書くことができました。作家とボーカリストという関係だけではなく、アーティスト同士のコラボレーション、みたいな感覚も持てましたね。

――田中隼人さんと田中秀和さんは以前もご一緒されていますね。

May’n はい。なので、またご一緒させていただききたいという思いからお願いしました。h-wonderさんは私自身がデビュー前からとても憧れていた方で。その頃は作家さんに注目するということはなかったんですけど、好きな曲を調べているとクレジットにh-wonderさんの名前がよくあって。「この人の曲が好きなんだな」と思ってはいました。h-wonderさんは、私がホリプロのオーディションで歌った、倖田來未さんの「COME WITH ME」を作編曲された方でもあるんですよ。だから、h-wonderさんとお仕事をご一緒することで夢を追いかけていたときの自分を初めて歌詞にできるかも、という思いもありました。

――新曲はどれも、日常の中で愛でてもらえる楽曲だと感じました。ある意味、ライブという非日常の力を借りなくても成立するというか、聴く人に寄り添う楽曲になっているなと。それは「等身大のMay’nを出す」という思いが表れた結果だと思うのですが、ご自身としては素のMay’nを出せた手ごたえについてはどう感じていますか?

May’n今の話を受けるとするならば、たしかに今までは一番にライブを意識して楽曲を作っていた感覚はあったと思います。みんながノリやすいとか声を出しやすいとか。静と動で言ったら動の部分ですよね。そこをすごく意識していました。もちろん、今回の新曲たちをライブで披露する日が楽しみではありますけど、そこにはやはりコロナ禍というところもとても影響していて、ライブありきではなく、みんなの日常に寄り添う音楽作りという面は確かにありました。だから、みんなの隣にいられるような、みんなを優しく抱きしめたいという思いが今まで以上に込められていると思います。自分としても、今までよりも距離が近い、等身大というところに至っている感覚はあります。

――自身のメッセージを届けるというところに喜びを感じてもいますか?

May’n 元々、自分の気持ちを歌で届けたいとか「このメッセージをみんなにぶつけたい」という思いはないタイプだったんですよ。自分の声=楽器として捉え、ボーカリストとしていかに音楽を奏でられるかという意識から音楽活動をスタートしていたので。プロの作詞家、作曲家の方が作ってくださった素晴らしい楽曲を、私もプロとして表現したいという気持ちでした。だけど、ライブを重ねていくうちに、ライブで元気をもらえている自分に気づきましたし、その頃から感謝の気持ちを伝えたい、自分が思うことをメッセージとして届けたいと思うようになりました。

――感謝以外にも、伝えたいメッセージとして浮かび上がってきた思いというのは?

May’n 共感から得られる安心感ってあると思うんですよ。自分がくよくよしているとき、「私も今めっちゃ悩んでる!」と言われるだけでホッとするじゃないですか? 誰かに何か言ってほしいとかではなく。そういう安心感を音楽で届けられたら、自分の伝えたいメッセージと重なるのかもしれないとは思いました。それこそが部長として届けるべき音楽であり、「みんなの隣にいるよ」という「May’n(メイン)テーマだと心底思った瞬間があったんです。だから、『momentbook』の中にいるのはみんなとライブを過ごしてきたMay’nであり、みんながいてくれたから誕生し、強くなっていったクリエイティビティだとは思います。

――自分で歌詞を書くというクリエイティビティを発揮することで、アーティストとしての成長もあったのではないかと思いますが?

May’n ありますね。なんていうか、メッセージって1つじゃないと思うんです。例えば、ナンバーワンを目指さなくてもオンリーワンになれれば、ということはよく言われますけど、私が書く歌詞は「ナンバーワンじゃなきゃ嫌だ」なんですよね。オンリーワンでいいよというのも大事なメッセージなので、そういう楽曲をいただいたらアーティストとして表現したい気持ちはあるんですけど。だから、自分が歌詞を書くとその歌詞の意味が自分にも向かってくるので、力強い歌が生まれてくるような実感はあります。「イリタブル」の歌詞では、私が人生でモットーとしていることを初めて書いてみたんですけど、頑張りすぎている人に対して「自分を責めなくてもいいじゃん」「たまには他人のせいにしてみれば?」というところなんですよ。今日は何もやる気がないけど昨日までは頑張れていたというとき、「昨日まではできていたんだからきっと私のせいじゃない」「あ、今日は気圧が下がっているからしょうがない」って。それだけで明日からまた頑張れると思うんです。小さい頃から自分を甘やかす大切さを感じてはいて、言葉にすると誤解を生みやすいメッセージなので言葉にはしづらいんですけど、音楽に変換したら伝えられるのかもしれないと思いました。特にコロナ禍で窮屈な世の中ではあるので、伝えてみたいメッセージではあったんですよね。初めて中林家以外で言いました(笑)。

――門外不出の(笑)。

May’n でも私は結構、「誰も傷つけたくない!」といういい子ちゃんタイプでもあるので、歌詞を書く怖さを感じた曲でもありました。もちろん楽しさも感じましたけど。それでも歌詞にすることで自分の言葉に責任感を持てますし、何よりもファンの皆さんがMay’nのことを「大好きだよ」「信じてるよ」と言ってくれる心強さがあるので乗り越えていけるんですよね。この15年間でどんどん強くなれたし、だからやっぱりキャリアを重ねた今が一番メッセージを届けたいと思います。誰かの力になれるなら、そのたった一人のためだけにでも音楽を作りたい、とはすごく思います。

次ページ:自分が歩んできた道、「May’nストリート」を収めたアルバム

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