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INTERVIEW

2021.05.24

シンガー・MARiAの無限の可能性――。じん、山下穂尊(いきものがかり)、山崎まさよしら豪華作家陣を迎えたソロアルバム『うたものがたり』リリースインタビュー

シンガー・MARiAの無限の可能性――。じん、山下穂尊(いきものがかり)、山崎まさよしら豪華作家陣を迎えたソロアルバム『うたものがたり』リリースインタビュー

橋口洋平(wacci)、山下穂尊(いきものがかり)らが開いたMARiAの新しい扉

――ここからは収録曲について詳しく聞いていきます。まず1曲目は、wacciの橋口洋平さんが作詞・作曲したリードトラック「コンコース」。駅でお別れする二人の情景が描かれていて、まさに身近な恋愛模様を描いたラブソングです。

MARiA 「コンコース」というタイトルも“新幹線”という歌詞も、今までの自分からは絶対に出てこなかったワードですね(笑)。この曲は橋口さんからいただいたデモを聴いたときからビビッときていたんですよ。メロディがすごく強くて、しかもサビのメロディと言葉のハマり具合がすごくストレートで気持ち良くて。そもそも男性目線の歌を歌うことが珍しいので不思議な感覚もありましたけど、描かれている内容がリアルだから、すごく自然体で歌いました。

――未練が残る別れを丁寧な情景描写とともに描いた歌詞が、「別の人の彼女になったよ」などのヒットで知られるwacciの橋口さんらしいですよね。

MARiA きっとこういう、「好きだけどどうしても離れなくてはならない気持ち」っていうのは、誰もが経験したことのあるものだと思うんですよ。それを真っ直ぐ表現できる橋口さんがすごいと思いましたし、自分も「なるほど」と思って。歌詞を書いて表現する側としても勉強になりましたね。

――この曲では切なさが滲むような歌声を聴かせていますが、特別意識したことはありますか?

MARiA 試しに何パターンか色んなキーで歌ってみたんですけど、普段GARNiDELiAで設定しているキーよりも高めにしました。切ない気持ちを伝えるのに、その歌の自然体な歌い方にしたくて。そこはすごく曲全体が繋がったんじゃないかなって思います。あくまで自然体で。

――2曲目の「憐哀感情」は、いきものがかりの山下穂尊さんが作詞・作曲したバラード。歌謡曲っぽい情念的なメロディとサウンドが、今までのMARiAさんにはなかった扉を開いた印象です。

MARiA この曲が今作の中で一番振り切りましたね。最初にレコーディングした楽曲だったので、まずは本間さんと「どういう方向性で作っていくか?」という相談からスタートしたんですけど、そこで「MARiA節はあえて封印しよう」という話になったんです。みんなが知っているMARiAの歌い方からあえて引き算していくような、そんなレコーディングの仕方。その全部を省いた真ん中にあるMARiAの声で、言葉をポツリポツリ語っていくような感じというか。“歌う”というよりも、何にもない暗いステージに私が一人、ピンスポットを受けて立っていて、そこで呟いているみたいな感覚。そのイメージが『うたものがたり』というタイトルにも繋がっていて。そのときに、私の歌が主人公で、10編の物語を演じていくイメージが浮かんだんですよ。この曲はアルバムの軸になっている感覚がありますね。

――なるほど。いつものMARiAさんらしい歌を封印したことで、新たに意識したことはありましたか?

MARiA この曲がというよりも、今回のアルバムは全体的に「言葉」を大切に歌いました。歌詞カードを見ながら聴かなくても言葉が入ってくるような歌にしたかったんです。そのなかでもこの「憐哀感情」は、歌詞が文学的で小説を読んでいるみたいな感覚になる、心の奥底のもっとさらに奥にある、数式では割り切れない感情というか、きっと人が言葉に出さずに長いあいだ大切にしてきた神秘的な何かがしっかりとある、そういう歌なので、言葉がちゃんと伝わるように丁寧に歌いたかったですね。

――たしかにこの曲の歌詞は古風な言葉遣いで恋愛の複雑な心境が描かれていて、言葉を読み解く面白さもあるように感じました。

MARiA 実は結構悲しい歌なんですよね。私の中にはあまりない感情かもしれない(笑)。でもまだ出会えていない隠れ私なのかもしれないですよ(笑)。

――MARiAさんはこの曲のように、深い悲しみに浸るようなことはあまりない?

MARiA もちろんすごく落ち込んで悲しくなるときもありますよ。でも割とすぐケロっとなるタイプなので(笑)。ただ、これまで悲しみを抱きしめる気持ちを表現することはあまりなかったけど、今回のアルバムを経て、私って悲しい歌にハマるということに気づいて。

――自分も今作を聴いてそう感じました。MARiAさんの少しウェットな声質が、悲しい曲に合うんだろうなと。

MARiA そんな気がします。今回、皆さんにMARiAをイメージして曲を書いてもらったら、意外とマイナー調の曲が多かったんですよ。私の声からはそういう曲調がイメージしやすいのかもしれないです。

――MARiAさんは昔ジャズを歌っていましたけど、もしかしたらその経験も関係しているのかもしれませんね。

MARiA たしかにその経験は今作にも活きていると思います。今回はオケの音数を少なめにして歌が前に出る作りにしたんですけど。

――3曲目「ガラスの鐘」も切ない恋の歌で、ラテンっぽい情熱的なフレイバーと「シンデレラ」をモチーフにした歌詞の組み合わせが、これまたどこか懐かしい匂いがします。

MARiA ちょっとオリエンタルな雰囲気ですよね。この曲も悲恋の歌ですけど、「隣哀感情」とはまた違った表現の仕方で。自分が歌詞を書いていたら絶対に書かないようなかわいい乙女の部分が出ていて、“女子の現実”というよりも“女子の秘密の願い”の歌という印象ですね。カボチャの馬車に跳び乗ったり、ガラスの靴を投げ捨てたりして。

――歌う際に“女の子”的なものを意識しましたか?

MARiA どの曲もですが歌い方は意識して変えていますよ。「隣哀感情」はかなり渋めのトーンで歌っていますが、「ガラスの鐘」は高域の部分を使って、可憐な感じの歌い方を意識していて。だって女子の心の中の本音というか、きっと言葉には出しずらい願いみたいな歌だから。今回のアルバムは10曲すべて年齢感もバラバラなので、意識をして、自然体で歌い方は結構変えたかもしれないです。

次ページ:草野華余子、山崎まさよし、TAKUYA――意外な組み合わせによる化学反応

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