INTERVIEW
2018.09.07
――カップリング曲の「グラデーション」はどんな楽曲に?
戸松 楽曲自体は、実は『COLORFUL GIFT』に入る候補曲だったんです。ほかの曲との兼ね合いで入らなかったんですけど、ディレクターさんのイチオシで。「またいいタイミングがあったときに歌おうね。温めておくね」って言っていたんですが……思いのほか早く日の目を浴びました(笑)。ディレクターさんがずっと私に歌わせたかった曲で、シャッフルのリズムでちょっと難しいというか、私は個人的にそのリズムが非常に苦手でして。リズム感がある人じゃないと歌えない曲なんですよ。昔、1stアルバムのときにシャッフル系の曲でめちゃくちゃ苦戦した記憶があって、ある意味トラウマの曲のジャンルなんです。
――そんなトラウマになっているリズムに、今回改めて挑むことになったと。
戸松 レコーディング前からディレクターさんも笑ってるんですよ、「超楽しみ」って(笑)。「私が苦手だってわかってるでしょー」なんて言いながらブースに入ったんですけど、これが意外に歌ってみたら楽しくて。ディレクターさんも「リズムをどう合わせようってことよりも、この曲をいかに自分の中に入れ込んで、力を抜いて歌えるかだね」って言ってくれて。曲のテイスト的にもリズム感的にも、鼻歌みたいに歌ったほうがいいテイクが録れたりする曲だったんです。それで何回か歌っているうちに力も抜けて、苦手意識がなくなって負の感情もなくなって、「トラウマになったときの感覚、全然ないじゃないか」って思えるようになったんです。歌詞も「TRY & JOY」と同じようにポジティブではあるんですけど、「グラデーション」は時間の流れがゆったりで、マイペースに頑張ったらいいじゃないっていう内容なんですよ。表現の仕方が違うだけで、こんなに感じるものが違うんだなっていうのがまた面白くて。歌詞に合わせて気持ちがだんだんマイペースになってきて、どんどん曲に慣れていって。いつもはブロック毎に録っていくんですけど、この曲は最初から最後まで自分で流れを作って、つるっと続けて丸ごと1曲録ってしまいました。
――たしかにとても自然なボーカルだとは思ったんですが、そんなレコーディングの仕方だったんですね。
戸松 珍しいんですよ、私がそういう録り方するの。ブロック毎に区切っちゃうとそこで感情が切れて、ニュアンスが変わってきちゃうんです。それで私もひとつの物語を読むような気持ちで、歌うっていうよりセリフを喋るような、そのくらいの力の抜き方で歌わせてもらいました。「こういうふうに歌う自分がいるんだ」って歌いながら思ったりもして。歌い終わってからディレクターさんに、なんで苦手な曲を歌わせたかったのか気になって聞いてみたんですよ。そうしたら「こういう歌が上手い人はいくらでもいる。でも自分が戸松 遥に求めているのは、戸松 遥が歌うからこその、上手いアーティストでは出ない魅力。その不器用さもひとつの武器になる」と。頑張って歌うっていう表現が戸松 遥としての、自分で言うのも恥ずかしいですけど「愛くるしさ」だったりとか……ディレクターさんが言ったんですよ!私が思ってることじゃないですから(笑)。そういう魅力なんだよって言われたときに「なるほど」と思って。苦手とか、歌ったことがないジャンルとか、ファンの人のイメージにもない曲にあえて挑戦することで、また新しい自分の一面を見せられるきっかけになるもんなんだなって。毛嫌いして、ちょっと怖いかも、苦手かもって逃げることは簡単じゃないですか。でも、そこにあえて10年後に向き合ってみたときに、自分も当時より全然苦手意識がなくなっていたし、むしろそれを楽しめる余裕もあったりして。それはきっとこの10年間の歩みとか、スフィアを含めていろんな楽曲に出会っていろんな表現をする経験をさせてもらえたから、10年前と歌への取り組み方が変われたんだなと思えたんです。「10周年ってすごいな!」って思った瞬間でした。
――それが周りの推薦もありつつ見つけられたというのは素晴らしいことですね。
戸松 変な話、自分でもし楽曲を選べるんだったら選んでなかったと思うんですね。周りに10周年のシングルを委ねたんですよ、2曲とも。“私がこういう曲を歌いたい”じゃなくて、“周りが思う10周年の戸松 遥”をプロデュースしてもらったんです。そういうきっかけで、食わず嫌いせずにちゃんと向き合ってみると「なんだ楽しいじゃん!」という発見があって。それが10周年においてのトライというか、1回挫折しても時が経ってからもう1回やると楽しいと思えることもあるんですよ。やっぱりつねにいろんなことに挑戦していきたいなって、改めて思いましたね。
――それでは最後に、読者の皆さんへのメッセージをお願いします。
戸松 ひとつの節目を迎えて、ここからまたあらたなスタートのような気がしています。10年の歴史があるからこそ、その歴史のおかげでできることがあると思うんです。自分も歳を重ねて、アーティスト活動も声優の仕事も経験すればするほどやりたいことが増えてきて。きっと30代になったらまたやりたいことが増えるだろうし、そのときにしかできないことがあると思うので、自分でも今後がすごく楽しみです。どんどん楽しそうなことを追求したいし、いろんな楽曲を歌っていきたい。「私はこういう人だから」って限定するよりも、いろんな自分を見せていける人でありたいですし、一生面白い表現者であれるように頑張りたいと思います!
Interview & Text By 青木佑磨(クリエンタ/学園祭学園)
Photography By /西田 航 (WATAROCK)
●リリース情報
「TRY & JOY」
9月5日発売
【初回生産限定盤(CD+DVD)】
品番:SMCL-557~58
価格:¥1,713
<CD>
1. TRY & JOY
2. グラデーション
3. TRY & JOY(Instrumental)
<DVD>
1. TRY & JOY Music Clip
1. TRY & JOY TV SPOT 15sec+30sec
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