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INTERVIEW

2017.08.30

10年後も色褪せない音を鳴らす 1stアルバム『Culture Vulture』la la larks インタビュー

ライブでリスナーと向き合ってきた5年間

───「失う」はかなりシリアスな雰囲気の楽曲ですが……。

江口 これは内村のお母さんがいちばん好きな曲ですね。バンドの結成当時に、内村が歌って好きそうな曲を揃えていったうちのひとつなんだと思います。不幸そうな感じですね。

内村 「不幸そうな曲が似合う」とは昔からずっと言われてきましたからね。前のバンドのときのあだ名が「未亡人」だったんですよ(笑)。なのでそういうイメージはあるんだと思います。この歌詞も当時すごく早く書けた記憶がありますね。あんまり書いたときのことを覚えていないんですけど、そういうものの方が完成度が高かったりするんですよ。

───向き合う時間が長かった曲ほど「苦労をした感」が出てしまっているとか?

内村 完成するまでに色々なパターンの歌詞を書いているので、ライブのときに正解が思い出せなくなるんです(笑)。「失う」はアルバム収録にあたって歌詞を変えていて、もともと「想いは鈍色」という歌詞だったんですよ。5年間ずっとその歌詞でライブで歌っていたんですけど、レコーディング前に江口さんが「鈍色って何?」って言いだして。

江口 ずっと「ルビー色」に聴こえてて、「ああ寺尾 聰ね」って思ってた(笑)。

内村 この曲、ライブで江口さんがハモってくれてたんですけど……。

江口 ずっと「ルビー色」でハモってた(笑)。

内村 それで歌詞の間違いに気づいた江口さんに「鈍色じゃない方がよくない?」と言われて、「想いは灰色」に変えたんです。そのレコーディング後にライブで「灰色」に変えて歌ったら、お客さんが気づいてくれて「内村さん、なんで鈍色から歌詞変えたんですか?」と言われました。江口さんよりお客さんの方がちゃんと聴き取れてましたね(笑)。

江口 この曲はサビの頭の音があまり高くないんですよ。コンペだと「サビを強く」というオーダーがあったりして、キー的にも高いところから入っていくものが多いんです。でもこの曲は結構下の方から入るかたちになっていて、こういう曲ってシングルでは最近あまりないと思うんです。なのでメロディーとしてもアルバムならではの曲なんじゃないでしょうか。

───「Reset」は「Massive Passive」と同じく、アルバム用の新規曲とのことですね。

江口 でも実は、いちばん古い曲なんです。la la larksができて、いちばん最初のころにコンペ用に作った曲なので。

内村 コンペ用に1コーラスだけが作ってあって、それをターキーさんが凄まじく気に入っていて。「これは必ず、いつか何かの機会で絶対に出す」と言っていたんですよ。その熱がすごく強くて、アルバム収録曲の会議になったときに「あの曲を入れよう」という話になったんです。

───各楽器が目立つセクションが分かれていたり、ライブの様子が想像しやすい楽曲のように感じました。作った当時はどういった意識で作られたのでしょうか。

江口 「Aが暗くてBで少し持ち上げて、サビでドーン!」という曲が多い中で、この曲は始めから前向きで明るい曲にしたかったんですよ。最初のAから疾走して止まらないという。でもそれが難しくて。タイアップ先の映像込みで見たら違和感がなくても、40歳近いおじさんバンドがオリジナル曲としてこの青春感を出すのはとても辛くて(笑)。レコーディングでいちばん最後の最後まで頭を悩ませられました。

───la la larksは複雑さや緊迫感が魅力という印象ではありますが、シンプルな曲の方がむしろ難しいというのは意外ですね。

江口 難しかったですね。普通にやるとどうしても若手感が出て、恥ずかしい感じになってしまうんですよ。そのときに打開のヒントになったのが、『東のエデン 劇場版 II Paradise Lost』のEDテーマだったSchool Food Punishmentの「after laughter」という曲だったんです。曲の若々しい雰囲気と、内村の憂いを帯びた声をいい形で融合できた曲だったという過去ライブラリがありまして。それを読み解き直して、内村があの楽曲にハマった瞬間を思い出して、ブラッシュアップして2017年に蘇らせました。

───コンペ用の曲として古くから存在していたものを、フル尺と歌詞をアルバムに合わせて完成させた曲なんですね。

内村 そうなんです。この曲は「Massive Passive」と同じように、今の私が書くものとして何を書くのがいいんだろうというのがテーマで。この明るい曲調に何を乗せよう、という悩みどころがあったんです。いちばん大事にしたのはまず、ライブで歌うときにお客さんに言葉がそのまま伝わること。ここ5年、ライブを通してお客さんと向き合ってきたので、アルバムを発表してこの曲をライブでやるときに、この曲で気持ちが伝わればと思いながら書きました。

江口 すごく若々しい曲なんで、ライブでやるときはスネ毛を剃らなきゃと思います(笑)。

───最後の曲「Self」はどういった立ち位置の曲なのでしょうか。

内村 これも結成当初からずっと演奏している曲です。la la larksのテーマソングというわけではないんですが、代表曲のようなものになっていますね。

江口 最初のころのライブで、チケットにオマケでつけたデモ音源が存在するんですよ。「ある曲を1回録っておくか」という話になって、録ってちょっとしたミックスをしただけのものですが。デモのバージョンと、その後ライブで続けているバージョンと、アルバムに収録したバージョンがあるということですね。今回のアレンジはある程度過去のものを踏襲してはいますが、組み立て方がまったく違う感じです。

───こちらももともとはコンペ用の楽曲だったりするんでしょうか?

江口 大元はそうですね。でもそこからバンドの曲としてアレンジしていって、そのころは本当にバンドを結成してすぐだったので、メンバーがいる意味を体現したような曲になったと思います。

───結成当初は「この面子がいるんだからこんな曲をやろう」という発想で曲を作っていたんですね。

江口 そうですね。そこから徐々に、タイアップの制限の中でどう面白く膨らませていくかという作り方に変わっていきました。

10年後にも色褪せない音を───『Culture Vulture』に込めた思い

───『Culture Vulture』はハイレゾ版もリリースされますが、ハイレゾ配信というものにご興味はありますか?

江口 基本的に自分たちがレコーディングスタジオで聴いている音は、マスタリングに行くまではハイレゾの状態なんです。最終的にマスタリングでCDに落とすという作業があるので、CDを聴くまでは実は僕たちはずっとハイレゾで聴いているんですよ。なのでぜひ皆さんも、僕たちが普段聴いているものに近い状態でアルバムを聴いてみてもらえるとうれしいですね。

───ハイレゾ版で聴いたときに注目してもらいたいポイントはありますか?

江口 今回実は、すべての音をビクタースタジオでレコーディングしているんですよ。全部の部屋を使いましたね。301と302と401がドラムが録れる部屋なんですけど、全部の部屋でドラムを録ったんです。曲に合わせて部屋を選んだりもしましたし、ドラムの音を聴いてもらえると部屋鳴りの違いまでわかるかもしれません。それがわかるくらい、こんなにドラムの音がいいアルバムってなかなかないですよ。

───ドラムもですが、ベースラインなどもかなり印象的に聴こえてきますよね。

江口 今回は、アルバムのタイトルによく似たとある機材を使ってRecをしているんですよ。ベースに関してはその機材を使った新しいRec法を編み出しまして、それが功を奏しました。日本の音楽ってどうしても、スタジオでスタンダードに使われているNS-10Mで聴くとベースやローの帯域が鳴っていなくて。その辺りの音域が沢山入っているせいで、マスタリングのときに音圧が稼ぎにくかったりするんです。今回はベースやキックのローエンドをしっかり切って作ってあるので、聴きやすくなっているんだと思います。エンジニアがすごくがんばってくれました。

───音数が飽和するギリギリまで詰め込んであるのに、耳にストレスなく聴ける作品になっていると思います。

江口 今回はマスタリングにおいても、音圧勝負をしなかったんです。ちょっと悩んだところがあったんですけど、マスタリング・エンジニアの方が助言してくれて。「もう頭打ちなくらいまで行ってるけど、若い子はスマホやパソコンでそのまま聴いちゃう人もいるだろうし、ここまでしっかり音を作ったけど最後の最後のマスタリングでもっと音圧を上げた方がいいんだろうか」と悩んでいるときに、エンジニアさんが「君の作品なんだから、君の好きなようにすればいいじゃん」と言ってくれて。それで「じゃあやめときます」と(笑)。それによってヘッドマージンがある状態のマスタリングができているんです。だからこそ、どれだけ音量を上げて聴いてもらっても大丈夫だと思います。

───エンジニアの方も、かなりバンド側と意思疎通を深く図られていたんですね。

江口 ミキサーの方とマスタリングの方って、職業は似ているようで実は違って。ミキサーはTD(トラックダウン)したら終わりで、マスタリングは2ミックスのステレオのものを音圧を稼いだだけで終わり、ということもよくあるんです。今回はそこのリレーションもすごくしっかり、同じスタジオでできたのは大きかったですね。大袈裟な言い方ですけど、やり方を若いミュージシャンやエンジニアに見せてあげたいです。10年後20年後に残るものを作る方が、ミュージシャン人生において絶対いいことだと教えてあげたいなと思います。そういう作品ができました。

───「最先端」を銘打ったものほど、意外と10年後に聴くと古く感じてしまったりしますよね。今作はエッジが聴いているのに古くならない音になっていると思います。

江口 湯水のようにお金を使って作られた90年代の音って、今聴いてもダサくないんですよね。掛けるべきところに掛かっているんだと思います。音に耐久性がありますよね。とあるミュージシャンの名盤が作られた時代のエピソードとして、そのころは1日に何十万円も掛かるスタジオに入って「歌詞が書けない」と言いながら何も録らずに終わったりしていたという昔話を何年か前に聞いて。今の時代じゃ、もうそんな風に贅沢に音楽は作れないと思っていたんです。でも今回ちゃんと全部スタジオで作らせてもらえるということなって、どうしてもその名盤のレベルまでクオリティーを押し上げたかったんです。自分の遺作になるくらいのつもりで作らないと後悔すると思ったんで。ターキーも言ってたよね?

内村 ターキーさんも、「俺はこれが遺作でもいい」と言ってましたね。

江口 メンバー一同そのくらいの気持ちで作りましたので、ぜひ聴いてもらいたいですね。よろしくお願いいたします!(終)

●リスアニ!WEBのインタビューはこちら

●la la larks『Culture Vulture』のレビューはこちら

la la larks
Vo.内村友美(ex. School Food Punishment)
Key./Gt./ Cho..江口亮(Stereo Fabrication of Youth ,MIM)
Gt.三井律郎(THE YOUTH , LOST IN TIME)
Ba.クボタケイスケ (ex.Sads)
Dr. ターキー(ex. GO!GO!7188)

アーティスト・ミュージシャンとして確固たるキャリアを有するメンバー5人が集まり、2012年に結成されたモダン・ポップ・ロック・バンド。
坂本真綾、ポルノグラフィティ、LiSA、さユり、いきものがかりなど数多くのアーティストのアレンジャー・プロデューサーとして活躍する江口をはじめ、ボーカル内村を除くメンバー全員が様々なアーティストのサポートを行いながらも、その軸足をla la larksに置いた活動を続けており、ありがちなキャリアミュージシャンの寄せ集めバンドとは一線を画している。
CDリリースよりライブを重視する活動姿勢により徐々に認知度をあげていくなか、洗練されたサウンド、ドラマチックな楽曲は、ミュージシャンやクリエイターなど多方面から支持が厚く、注目を集め続けている。

●ライブ情報
la la larksCulture Vulture」リリースツアー『 C.V.C
11月  3日(金・祝)渋谷 WWW http://sogotokyo.com/
11月  5日(日)名古屋 ell.FITS ALL  http://www.ell.co.jp
11月  7日(火)大阪 Zeela http://www.greens-corp.co.jp/
11月10日(金)福岡 the voodoo lounge http://voodoolounge.jp

la la larks 5周年特設サイト

la la larks フライングドッグ公式サイト

lalalarks – Twitter

la la larks
Culture Vulture

FlyingDog
2016.08.30

FLAC・WAV 48kHz/24bit

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 収録曲

 1.Massive Passive(新曲)
   lyrics, music & arrangement : la la larks
   strings arrangement : 石塚 徹

 2.色彩 -Album Ver.-
   lyrics : 坂本真綾
   music &  arrangement : la la larks
   strings arrangement : 江口 亮・石塚 徹

 3.ハレルヤ(TVアニメ「空戦魔導士候補生の教官」エンディングテーマ)
   lyrics, music & arrangement : la la larks

 4.end of refrain
   lyrics, music & arrangement : la la larks

 5.loop(新曲)
   lyrics, music & arrangement : la la larks
   strings arrangement : 河野 伸

 6.たりない(新曲)
   lyrics, music & arrangement : la la larks
   horn arrangement : 河野 伸

 7.さよならワルツ(新曲)
   lyrics, music & arrangement : la la larks

 8.Q And A -Album Ver.-
   lyrics, music & arrangement : la la larks

 9.失う(新曲)
   lyrics, music & arrangement : la la larks

10.ego-izm(TVアニメ「M3~ソノ黑キ鋼~」エンディングテーマ)
   lyrics, music & arrangement : la la larks
   strings arrangement : 江口 亮・石塚 徹

11.Reset(新曲)
   lyrics, music & arrangement : la la larks

12.Self(新曲)
   lyrics, music & arrangement : la la larks

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