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REPORT

2016.10.20

ゆっくりとでも、みんなと一緒に歩きたい。 “伊藤美来 Birthday Live Miku’s Adventures~Thanks to 19~”レポート

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10月10日、“伊藤美来 Birthday Live Miku’s Adventures”が、品川インターシティホールにて開催。10代最後のワンマンライブとなったこの日のライブは、それぞれコンセプトを変えて昼夜2回の公演が行われた。本稿ではそのうち昼の部“Thanks to 19”の模様について、レポートをお届けする。

駆け抜けた10代を、あらゆる面から振り返る選曲

センターステージにまず登場した伊藤は、全方位に笑顔のプレゼントを届けながら「For you!!」でフロアを青く染める。間奏で「もっとー!!」と会場のボルテージをさらに引き上げると、続く「Take you to My PARTY!!」ではメインステージに移り、両サイドのお立ち台に登り、最前勢はもちろん、高い場所だからこそ見える後方へも視線を飛ばす。キュートなダンスに愛らしいボーカル、初っ端から彼女の魅力全開のステージングだ。かと思えば、昨年のバースデーライブで誕生したオリジナル曲「妄想Realize」では、その前口上通り“ヒーロー声優・伊藤美来”が登場。自らの趣味を活かした特撮ソングチックなナンバーで、ボーカルには凛々しさを少々プラス。パフォーマンスにも決め所で拳を振り下ろしたりと力が入り、気持ちよさそうな表情で歌いきっていた。

曲明け、今回のライブタイトルが“10代の旅をしていこう”というコンセプトに基づいてつけられたものであることを明かすと、去年に続けてバースデーライブを開催できたことへの喜びに加え、新調された可愛らしい衣装にテンションUPした……などのエピソードを、またもキラキラの笑顔で語る。そんなトークが一段落したところで、続いてカバー曲ゾーンへ。

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2曲続けて歌われたカバー曲の1曲目は、研修生時代にもレッスンで歌っていた楽曲「SUPER∞STREAM」。伊藤のソロの歌声ならではのキュートさと楽曲の持つ疾走感とが、原曲とは違ったあらたな魅力を放つ。また偶然かもしれないが、サビに「Next Future 見逃さないで」というフレーズを持つこの曲を選んだのは、デビューを控えた彼女からの隠れたメッセージなのかも……などと邪推してしまった。さらに、次曲「コネクト」でも、サビの「もう何があってもくじけない」にも同様の決意が込められているのかも……とまたも想像が働く。そんなこの曲は、先ほどとは逆に伊藤の歌声が原曲のイメージに近かった印象が強い。真反対のアプローチで楽曲を輝かせつつ、密かに同様のメッセージを感じ取れる思い出の曲たち――このタイミングで披露するカバー曲として、間違いなくこの2曲はベストだった。

そんな興奮のカバーゾーンを抜けたところで、伊藤にサプライズが炸裂する。ステージ後方のメインスクリーンに、なんとTrySailからのビデオメッセージが! 突然上映され始めたその映像に最初こそリアクションを取るものの、次第にモニターをじっと観つめる伊藤。上映後も気持ちの整理がつくまで少々時間がかかったが、声優デビューの頃からの仲である3人からのメッセージに改めて感謝していた。

そこから元気をもらった伊藤、今度は『普通の女子高生が【ろこどる】やってみた。』のキャラソン「しょうらいのゆめ」の初披露へ。歌唱前に伊藤は「(自ら演じる)奈々子でありながら自分にもリンクするところがいっぱいなので、自分かキャラかわからなくなるくらい似てるんだな、って思った曲です」と語ってから、穏やかな表情でじんわりと歌い出す。その表情をそのまま転写したかのような柔らか成分の高い歌声も実に心地よく、みずみずしい歌声とはまた違う魅力を持った、伊藤美来の“しょうらい”への広がりをより楽しみにさせてくれた。

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胸にそっと手を添えたところで曲が締まると、伊藤はステージ奥のドアから一旦降壇。インターミッションとして、伊藤がバースデーパーティーのお寿司を賭けたボルダリングへの挑戦VTRが上映され、場内は少々和やかムードに。そんな空気を一変させたのが、雷鳴とともにスタートした「星鳴る夜の誘惑者」。このStylipSの、ミドルテンポのド真ん中アイドルナンバーとともに再登場した伊藤は、決め所のはっきりとしたダンスに加え、2サビ明け間奏では舞台を広く使った無声劇のようなパフォーマンスを展開。目や表情など細部に至るまで、こだわり抜かれたステージだった。同時に、Dメロのタンギングのような連続三連符などのテクニカルなポイントもしっかり歌いきり、歌声の魅力も併せて感じられる濃厚な1曲に。

曲明けのMCでは、衣装の話題に。かっこよさにプラスした「10代最後なので、横の部分を制服っぽくプリーツスカートにしてもらった」というこだわりの部分に話題が及ぶと、またもうれしそうな表情を見せる。そんな衣装に身を包んだ彼女、そのかっこよさを活かして全開で飛ばす、特撮ソングゾーンに入る。「ELEMENTS」冒頭のしっとりめの歌声で耳目を引きつけたかと思えば、サウンドがロック色強くなった瞬間に一発でモードが切り替わる伊藤。培ったステージ経験に、彼女の特撮愛が掛け合わさったからこその出来栄えで、歌いきった表情にも自信と達成感が満ちあふれていた。続く「Anything Goes!」のイントロではセンターステージまで駆け出してきて、このブチ上がり曲を会場全体と一緒に楽しむ。間奏で煽る表情も笑顔全開で、その楽しさに引っ張られてかラスサビ前に力強いハイトーン部分の声の伸びも非常に良好だ。そして鳴り響くサイレン音とともに、「特捜戦隊デカレンジャー」へ。Bメロのカウント部で場内の一体感はさらに増し、それを感じたのか伊藤もサビのコール部でとっさに観客へマイクを向ける。そしてそれにも即座に対応するファンのペンライトは、いつしかホール内をレッドに染めていた。

この日みんなと完成させた、「泡とベルベーヌ」

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興奮のブロックが終わったところで、再びVTR上映。今度は伊藤のこれまでの足跡をたどったヒストリームービー「Trajectory to DREAM ~夢へのキセキ~」が流れる。オーディション時や定期公演の際の少々懐かしい画像にはじまり、ソロライブやイベントのたびに涙していた姿も。その映像が「2016年10月12日 メジャーデビュー」の文字で締めくくられると、白いドレッシーな衣装に身を包んだ彼女が、そのデビュー曲「泡とベルベーヌ」とともに登場。衣装と初々しいドキドキを描いたこの曲、そして伊藤の歌声との相性は抜群で、キュートかつイノセントな空間を作り上げる。続く「Morning Coffee」は少々テンポが上がり、それに合わせて先ほどよりもちょっとだけアグレッシブに、おてんばなステージングを繰り広げていた。

歌唱後には、ともに初披露だったこの曲に込めた彼女の想いが語られる。「泡とベルベーヌ」では「すごく緊張したけど、初披露でしっかり届けられたらと思っていっぱい練習しました」とこの日に向けての心構えを語り、「Morning Coffee」については「背中を押してくれる、勇気づけてくれる曲」と紹介。その流れで今度はライブグッズの紹介へ……と思いきや、「Happy Birthday」に乗せてケーキが登場。しかもそれを運んできたのは、日本コロムビア株式会社 代表取締役社長・吉田眞市氏。まさかの会社を挙げてのサプライズに、伊藤も「だいぶ驚きました!」と思わずびっくり。だがそんな吉田社長からソロデビューの意気込みを聞かれると、「今までより責任感も出るし、自分の声や歌とも向き合っていくきっかけになると思います。みんなと、ゆっくりでもいいので進んでいけたら」としっかりと答えていた。

さて、ライブはいよいよラストスパート、2曲連続でのStylipS曲ゾーンへ。「Prism Sympathy」ではステージ両サイドのお立ち台からセンターステージまで、縦横無尽にステージを使いそのパフォーマンスを届ける。そうして会場に蓄えられた熱量は、続く「STUDY×STUDY」で一気に爆発。この日いちばんかと思わんばかりのコールと熱量が、ホールを覆う。伊藤のパフォーマンスも、センターステージではそれらすべてに対応するかのようにあらゆる方向へアピールを欠かさず、ラスサビではメインステージで本来の振付もバッチリ披露。前述の盛り上がりも相まって、伊藤美来の“これまで”が凝縮された1曲になったように感じられたのは、筆者だけだろうか?

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歌い終わった彼女は、ソロデビューを初めて聞いた頃の心持ちを語る。その頃の彼女は、昨年のバースデーライブで初めてひとりのステージを踏み、ちょうど「ひとりでのパフォーマンス・歌も楽しい!」と感じていた時期。そしていよいよ、そのソロデビューを直前に控えたこの日、「今日みんなの前で新曲を歌って、『これで曲って完成するんだな』と感じました。レコーディングはひとりの戦いなんですけど、みんなに笑顔で聴いてもらうと、その曲が完成する感じがしてうれしかったです」と、デビュー曲の“無事完成”を実感。そして「まだまだお子ちゃまだけど、みんなとアーティストとして、声優・役者として歩んでいきたい気持ちはいつまででも変わりません。それを信じて、これからも一緒にいてくれる?」と決意とともにファンへ問いかける。もちろん返ってくるのは、YESを意味する大歓声だ。

そんな場内の想いを受け取った彼女が、最後に届けたのは「Dear Honesty」。とにかく終始手を振っていた伊藤の姿が印象的な曲で、最後方まで届くように、たまにぴょんぴょん跳ねたりもしながら、近くへも遠くへも感謝の想いを届ける。それはこの日この場には、最高最良のパフォーマンスでしかなかった。最後にはメインステージ中央で、笑顔でこの曲を終えたのだった。曲明けも手を振りながらファンへ挨拶して回る伊藤。最後はオフマイクで「ありがとうございましたー!」と思いっきり気持ちを伝えて、ステージうしろに開いたドアへと踏み出し、ステージを降りた。

数々のサプライズへの初々しいリアクションなど、素の彼女はたしかに自身が言うように“まだまだお子ちゃま”かもしれない。だがそんな一面を見せつつも、無垢さと対を成すような大人びたパフォーマンスも持ち合わせた“今の伊藤美来”の姿は、今しか観ることができないのだ。彼女はきっとこれから、アーティストとしてもめきめき成長していくはず。だからこそ、その時々の伊藤美来の輝きを、ぜひ逃すことなく観てほしい――この日の彼女のステージを目にし、心からそう思わされた。

photography by 江藤はんな
Text by 須永兼次

“伊藤美来 Birthday Live Miku’s Adventures~Thanks to 19~”
2016.10.10@品川インターシティホール
【SET LIST】
M1.For you!!
M2.Take you to My PARTY!!
M3.妄想Realize
<MC>
M4.SUPER∞STREAM
M5.コネクト
<MC(サプライズ映像コメント:TrySail)>
M6.しょうらいのゆめ
<映像(ボルダリングチャレンジ)>
M7.星鳴る夜の誘惑者
<MC>
M8.ELEMENTS
M9.Anything Goes!
M10.特捜戦隊デカレンジャー
<映像(Trajectory to DREAM ~夢へのキセキ~)>
M11.泡とベルベーヌ
M12.Morning Coffee
<MC(サプライズゲスト:日本コロムビア株式会社 代表取締役社長 吉田眞市氏)>
M13.Prism Sympathy
M14.STUDY×STUDY
<MC>
M15.Dear Honesty


●リリース情報
泡とベルベーヌ
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<CD>
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品番:COCC-17228
価格:¥1,200+税

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1. 泡とベルベーヌ
2. Morning Coffee
3. 七色Cookie
4. 泡とベルベーヌ(off vocal ver.)
5. Morning Coffee(off vocal ver.)
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