約3年ぶりのニュー・アルバム『ウインカー』リリース!特撮・大槻ケンヂのインタビューを公開!

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大槻ケンヂ率いるバンド「特撮」が、約3年ぶりのニュー・アルバム『ウインカー』を発表した。大槻をはじめ、それぞれに多彩な活躍を繰り広げるメンバーが持ち寄った要素が渾然一体となった、唯一無二のミクスチャー・ロック。その最新の形を象徴するキーは“車”……? 映画『ヌイグルマーZ』の主題歌「シネマタイズ(映画化)」や、アニメ『監獄学園〈プリズンスクール〉』の主題歌として話題を集めた「愛のプリズン」、バラエティ『声優男子…ですが?』のテーマ曲「七人の妖」のカバーも収録、豪華ゲストも参加した注目のアルバムの秘密に迫る!!

「愛のプリズン」で極めた自分の中の頂上

――特撮の新作は『ウインカー』というタイトルからもわかるように、車、ドライブをコンセプトにしたアルバムだそうですが。

大槻ケンヂ まぁ、コンセプトというか、あくまでキーになるものということですかね。ふたつ理由がありまして、ひとつはこのアルバムを作る頃に、僕が10年ぶりに車を買って、運転を始めたということ。もうひとつは、プリプロでメンバーが作った曲のデモテープを聞いたときに、ドライブ・ミュージック的な感覚を感じたんですね。そのときあったのは、「荒井田メルの上昇」「富津へ」の元になった曲と、もう一曲、没になったものだったんですが。抑えた感じの曲だったのでそう思えたんでしょうね。ともかく、それでキー・ポイントで車が出てくるとおかしいかな、面白いかなと思って、カーラジオから流れてきたらいい感じのアルバムにしてみたいなと思ったんです。

――しかし仕上がった楽曲にはハードなテイストもありますよね。

大槻 でも年々、血湧き肉躍るハード・サウンドとは違う方向にも特撮はいっている気がしますね。再結成以降……いや、前のアルバム(『パナギアの恩恵』)からかな。まさに音楽性がギア・チェンジして、ウインカー、方向指示器を点滅させている気がします。メンバーみんな、大人になったからですかねぇ。

――今回のアルバムでは、荒井田メルというひとりの少女の物語が、アルバム全体の歌詞の縦軸となっています。この着想はどこから?

大槻 ちょっと不条理なことをやってみたいなと思ったんです。「愛のプリズン」(『監獄学園』のオープニング)が、大槻ケンヂの作詞人生の中で、あるひとつの頂上を極めた歌詞だという気持ちがしたんですね。だからその次の山をめざそうと思って、で、荒井田メルという架空の女の子が、あることをきっかけにカリスマになってしまう不思議な物語を作った。そういうことですかね。

――何か大本のインスピレーションになった体験はあったんですか?

大槻 僕、よく交通事故を見るんですよ。事故が起きたときって、映画とかだと周囲が騒がしくなるじゃないですか? でも本当はそうならないんですよね。みんな、ぼんやりするんです。事故を起こした当人同士ですらぼんやりしている。その不思議な空間をスケッチしてみたいという気持ちはあったと思います。

――「愛のプリズン」で頂上を極めた、ということをもう少し具体的に説明していただいてもいいですか?

大槻 以前からずっと、ふざけているような、真理を突いているような、はぐらかしているような、結局よくわからないけれど胸に来るものがある歌詞を書きたいとずっと思っていたんです。それで『監獄学園』の主題歌の歌詞のオファーをいただいて、原作を読んで、まあ、とんでもないマンガだ、どうしよう? と最初は思ったわけです(笑)。で、NARASAKIの曲を聴いて最初にパッと思い浮かんだのが“ダダッダッダッ脱走脱走”という冒頭のフレーズで、一番はその勢いで終わった。そして二番から急激に「もしかしたら深いことを言っているかもしれない」という内容に展開して、でもそこから先の部分で「そうなのか? 全体を見るとわからない」という具合になって……本当にうまいこと、書きたかった形にハマったんですよ。よくできたな、と。

――今回のアルバムで「愛のプリズン(特撮ver.)」としてご自分で歌唱されたわけですけど、感触はいかがでした?

大槻 アニメのファンの方々にすごく評判が良いと聞いていたので、うれしかったですね。声優さんバージョンと特撮バージョンで、全然違う世界観で同じ歌詞を表現できるというのが。「七人の妖」も同じです。

――「七人の妖」はファミリー劇場の「声優男子ですが…?」のタイアップですよね。

大槻 そう。元々、七人の若手声優さんたちの歌った曲で。だから面白いんですよね。このアルバムでは、「愛のプリズン」「七人の妖」と、合計12人の男性声優さんの歌声だったものを、僕がひとりで歌っていることになる。男性声優のファンの方って、その繋がりで、スピンオフみたいな形で特撮を聴いてくれたりってあるのかなあ。

――大槻ケンヂと絶望少女達のときはいかがだったんですか?

大槻 あとで聞いた話では、大槻ケンヂと絶望少女達のライブがきっかけで特撮のライブを見に来てくれた人もいるみたいね。うれしいなと思う。逆に僕や特撮の音楽を聞いていた人が声優さんの世界にハマって……みたいなこともあるみたいなんで、いいエールを送りあえているんじゃないかと思います。そうそう、「富津へ」に後藤沙緒里さんが参加しているのは、『さよなら絶望先生』からの繋がりです。NARASAKIさんが後藤沙緒里さんのウィスパー・ボイスが素晴らしいということで、リクエストを出して。

――なるほど。今回の男性声優さんとのご縁も、発展的な方向につながると面白いですね。

大槻 ですよねぇ~。これはもしかしたら僕の勘違いだったら申し訳ないんだけれども、たぶん、男性声優のファンの女性というのは、いわゆるボーイズ・ラブ的なものを好きな方が多いのかな? という気がしないでもなくもないんですよ。だから、まあ、特撮のメンバーをそういう目線で……これから、見てくれたりするのかな? 見たりすることがあるのかな!? っていう。そのときに我々はどう応えたらいいんだろうなって。そんなことも考えたりなんかして(笑)。……くだらない話をしてすみませんでした! ディスってないですよ!! 男子声優ファンの女子をディスってないですからね!! そういう傾向があるというのを漏れ伝え聞いたから、ちょっと言ってみただけです。そういう目で見られてもやぶさかではない、といっているんですよ!!!! ……何の話でしたっけ?(笑)

「爪痕を残そう」とは思わないように

――アニメではないですが、今回のアルバムでタイアップといいますと、2014年発売のシングル「シネマタイズ(映画化)」がようやくアルバムに収録されます。

大槻 作ってから相当経ってますよねえ。「ハンマーはトントン」も。だけどこのアルバムの中に上手いこと収まって、浮いてはいないと思う。

――入れることは最初から考えていたんですか?

大槻 「アルバムを作りましょう」というときに、自然な流れでそのあたりの曲も入れましょうとなりました。みんなものすごく前向きで、とにかく新曲を作りたいという意識があったんですが。

――今、特撮というバンドの中でそういう空気感がある。

大槻 すごく前向きなんですよね。僕なんかも、昔は歌詞を書くのが難行、苦行だったんですけど、ほかのバンドでの活動や楽曲提供のために、かなりの量を書くようになったんです。そうしたらね、あるときから、割とスッと歌詞が出てくるようになった。今、僕、量産体制に入ったかもしれない。

――書き続けるうちに脳が切り替わったような。

大槻 昔はツラい作業と考えていたところがあるんだろうな。今は「果たしてどんな曲に会えるんだろう?」という気持ちで作り始めていますよね。あとは「爪痕を残そう」としない。これは重要だと思っているんだけど、今、どんな表現でも、パフォーマンスでも、みんな結構気負って「爪痕を残す!」っていうじゃないですか。若手芸人さんとかも『アメトーーク!』なんかに出たときには、「なんとしてでも爪痕を!」っていって、大概みんな滑る(笑)。なんでもそうなんだけど、たぶん、表現っていうのは、「爪痕を残そう」としない方が、肩の力が抜けて、いいものができる気がするんですよね。そうやって作られたものが、ある日、「爪痕を残す」んじゃないかと思うんです。作詞も、ライブも、今は僕はそういう意識でやっています。

――「アリス」の歌詞とか、摩訶不思議な境地に達しているような。

大槻 気づきました? どういうことだか。

――あ、え……。

大槻 『不思議の国のアリス』のアリスというのは、物の変化を体現する人でしょ? いろんなものが大きくなったり小さくなったりするのを体現する。そのアリスが、谷村新司さんのアリスに変化するという、すごい世界観なんですよ、あの歌詞は!!

――(絶句)。

大槻 これはね、ホントにね、ちょっと……俺、あえていうけど、特撮でしかない歌詞ですよ。こんなことを歌う人はいない。何ごとだ! と思います。相当気に入っているんです、実をいうと。ちなみに歌詞に「プレアデス」と出てくるのは、『昴』(谷村新司のヒット曲)のことなんですよ!! つまり、アリスからまたソロにさえ変容したという。

――な、なるほど!

大槻 さっきはああいいましたけど、ちょっと頑張ってみたという部分があります。僕の歌詞はいろいろ引用して、それを再構築していくことが多いんだけど。「人間蒸発」の「ルー・リードなんかにいかれちゃってさ」ってのは、あれはエディ藩さんの「横浜ホンキートンク・ブルース」っていろんな人がカバーしている名曲があって、それの「ヘミングウェイなんかにかぶれちゃってさ」っていう歌詞へのオマージュなんですよ。でもそこに、ルー・リードは普通持ってこないし、「ワイルドサイドを歩け」というルー・リードの曲と、「ワイルドサイドを歩くけどでも川の流れを見に行っちゃダメだ」という信念が荒井田メルという少女を介して繋がるという。自分の中でクロスワード・パズルみたいに、いろんな要素を重ねあわせて構築していっている。それはなんでかというと、特撮のメンバーがいろんな現場でいろんな音楽をやってきて、それを特撮の中で再構築しているんですね。アーリー(ARIMATSU、有松 博)はVAMPSの活動で世界中でドラムを叩いて、いろんなところから新しいサウンドを持ってくる。NARASAKIもアイドルとか、いろんなフィールドで活躍している。エディー(三柴 理)も筋少始め、いろいろなところから新しい音を持ってくる。そのクロスワードパズルに負けない、大きい数の、ピースのクロスワード・パズルを、僕の歌詞もやらなきゃいけないんですよね。

――音楽性がミクスチャーな分、歌詞もミクスチャーである、と。

大槻 そう。ルイス・キャロルと谷村さんのアリスがクロスオーバーするとはね。日本でも初じゃないかなあ~。

――世界初だと思います(笑)。しかしなるほど、特撮というバンドがとてもいい状態にあると、よくわかりました。

大槻 そうですね。あとはライブのやり方でしょうね。なんか、僕はずっと煽って煽ってというタイプだったんだけど、特撮はちょっとそうじゃない方向にシフトしていきたいなとも思っているんですよね。煽らずともお客さんが自然にノッていく、というのかな。そういうのをやれないかなと思っているんです。ま、きっと煽りまくる人だろうけど(笑)。2月7日のライブで結構『ウインカー』からの曲をやっちゃおうと思うので、結構聴き込んできてほしいですね。

――アニソン好きな人が行っても大丈夫ですか?

大槻 ああ、もう、オールマイティーですよ。全然どなたが来てくださってもいいと思いますよ。「愛のプリズン」もやります!特撮でアニソン・イベントにも出たいですねえ。アニソンの現場は華やかで楽しいんだよね。ロックとはまた違った。サイリュームがサーッとなってさ。きらびやかな衣装を着た女性声優さんが歌い踊ってさ。呼んでください! ……あと、いつかオーケンアニソンワークスのアルバムを作れないかなと思っています。もうかなりのフル・アルバムを作れるくらいの曲数があるので、レコード会社の枠を超えてコンピを作りたいですね。

INTERVIEW & TEXT BY 前田 久


●リリース情報
『ウインカー』
発売中
初回限定盤【CD+DVD】
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品番:KICS-93352 
価格:¥3,241+税

通常盤【CD】
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品番:KICS-3352 
価格:¥2,778+税
ディスクユニオン限定Tシャツ付セット(初回限定盤)【CD+Tシャツ】
価格:¥4,352+税

【CD】
M1:荒井田メルの上昇 
M2:音の中へ
M3:愛のプリズン(特撮ver.)
M4:アリス
M5:シネマタイズ(映画化)
M6:富津へ
M7:中古車ディーラー
M8:ハンマーはトントン
M9:人間蒸発
M10:7人の妖
M11:旅の理由
M12:ハザード
【DVD】
2015年特撮LIVEダイジェストドキュメント映像
・2015/3/21 @新宿ReNY
・2015/3/25 @umeda AKASO
・2015/8/1 @SHIBUYA CLUB QUATTRO

●ライブ情報
大槻ケンヂ 50th生誕祭
 2016年2月7日(日)赤坂BLITZ

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