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2016.02.02

そして彼女もその光の中へ。「THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 3rd LIVE TOUR BELIEVE MY DRE@M!!」開幕名古屋公演レポート

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『アイドルマスター ミリオンライブ!』初のライブツアー「THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 3rdLIVE TOUR BELIEVE MY DRE@M!!」の名古屋公演が1月31日、名古屋国際会議場センチュリーホールにて開催された。

2014年6月中野サンプラザでのファーストライブ、そして2015年4月幕張メッセでのセカンドライブに続くミリオン3rdライブは、名古屋・仙台・大阪・福岡・幕張の5会場7公演を巡る初の全国ツアーとなった。今回のツアーは、ミリオンシアター組37人がいずれかの会場に必ず出演する前代未聞かつ特別なもの。開幕を告げる名古屋公演には、春日未来役の山崎はるか、伊吹翼役のMachico、ジュリア役の愛美、大神環役の稲川英里、矢吹可奈役の木戸衣吹、宮尾美也役の桐谷蝶々、徳川まつり役の諏訪彩花、馬場このみ役の高橋未奈美、所恵美役の藤井ゆきよ、周防桃子役の渡部恵子が出演した。今回のツアーは各会場持ち回りでの2人リーダー制を導入しており、名古屋公演ではMachicoと木戸衣吹がリーダーを務めた。

今回のセットリストはソロ曲、ユニット曲、デュエット曲、そしてライブ半ばでの765プロ楽曲カバーコーナーとバラエティ豊かな構成。ツアーだから使い回しが効くように…とかはあまり考えず、このメンバーでベストのライブを組むにはどうすればいいかをとことん追求した印象だ。今回はセットリストの区切りが明瞭だったため、各ブロックの印象と個人的な注目点を中心にレポートしていく。

ステージにリアル環が降臨! の第1ブロック

M01:Dreaming!(全員)
M02:エスケープ(愛美、藤井)
M03:カーニヴァル・ジャパネスク(諏訪)
M04:BOUNCING♪ SMILE!(稲川)
M05:デコレーション・ドリ~ミンッ♪(渡部)
M06:Smiling Crescent(桐谷・稲川)

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正確には「Dreaming!」はオープニングだが。劇場風のステージの大階段には5つのお立ち台が用意されており、「Dreaming!」では2人*5組がそれぞれに収まる。センターはリーダーのMachicoと木戸だ。冒頭の挨拶はキャラクターとして挨拶後、中の人が挨拶する流れ。キャラクター挨拶と会場の歓声はゲームに収録されるらしいので楽しみにしたい(とちったところも、使うのだろうか?)。この「キャラとしての挨拶」が抜群にはまっていたのが稲川。稲川の『ミリオンライブ!』関連イベント出演は2013年12月の「LIVE THE@TRE PERFORMENCE 08」発売イベント以来。名古屋のリーダーである木戸がミリオン関連で初出演したイベントだったように思う。当時はイベントで歌うのも初めてとのことで緊張の色が濃かった稲川だが、今回は環としての言葉を多用したこともあってか、キャラクターに寄った陽気なテンション。きっとこちらの方が地に近いのだろうが、初披露の「BOUNCING♪ SMILE!」、そして「Smiling Crescent」で見せた大神環そのもののテンション感は素晴らしかった。力こぶをつくるようなちっちゃパワフルな振り、シャキーンと決めるところは決め、何より表情豊か。「親分も一緒に言ってね!」「たららららららららー」「ありがとー!」の流れが素晴らしすぎて、歌い終わりの「くふふっ」という感じの笑みに魅了された人も多いはずだ。LTPイベントは小さなライブハウスで開催されていたため、この日初めて稲川の姿を見た観客が多かったはず。「まだ見ぬ強豪」というべきか、これだけの演じ手が大規模ライブ初参戦なところにミリオンの層の分厚さを感じる。

ご当地出身の諏訪の「カーニヴァル・ジャパネスク」も渡部の「デコレーション・ドリ~ミンッ♪」も、声優だから、役者だから表現できるキャラクター性が強い楽曲、という点は共通していたかもしれない。そういった味の強い畳み掛けの前に、ミリオンの中でも屈指のかっこいい女の子である愛美と藤井が「エスケープ」でバシッと決めたことで、ぐっと空気が締まった。リーダー以外でかっこよさを体現して決められる信頼の2人、ご当地名古屋出身の諏訪、そしてナンバリングライブ初登場の3人。顔見せを兼ねた、かなり狙ったライブの立ち上がりだと思う。歌い終えた渡部が藤井に、「もっかいウィンクやって!」とねだる無茶振りも。

そこに“アイドル”がいた第2ブロック

M07:Eternal Spiral(木戸・山崎)
M08:Bigバルーン◎(高橋・渡部)
M09:Growing Storm!(山崎・Machico)
M10:初恋バタフライ(桐谷)
M11:おまじない(木戸)

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「新しい表情」を色々と見せてくれたのが「Eternal Spiral」の木戸と山崎だった。可奈と未来といえばどちらも前向きで自然と周りに影響を与える天真爛漫なタイプだが、この曲ではちょっと大人な表現に挑戦。妖艶さや挑発するような笑みなど、楽曲に寄り添った新しい一面がたくさん見えた。そんな中、曲中の振り返りざまや、ラストの木戸の射抜くようなキメの絵になる感じが非常に印象に残った。そして、ソロの「おまじない」では4人のダンサーを従えた木戸の圧倒的なアイドル感に圧倒された。イメージが変わったのは、髪が少し伸びてボブになったことで子供っぽさが抜けたこともあるだろうか。ボーカルとビジュアルの完成度の高さ、アイドルらしくもポイントポイントのキメに意識が通ったダンスと隙がない。

存在そのものが放つアイドル性の強さ。「約束だよー!」の声や、「音符と私が出会うよ」のフレーズでこぼれた笑顔のかわいさ、アイドルらしさに、会場からどよめきや叫び声が起こった。トークの時の木戸はいつもの木戸なので、これもまた考えぬいた演技表現と努力の賜物なのだと思うが、イメージのフィルターを必要としない説得力には驚かされた。

「Bigバルーン◎」はライブ初披露曲。渡部はそのことを聞いてうわーと思ったそうで、しかも「練習でもステップがうまく踏めなくてダンスの先生も苦笑いで」とのこと。初披露をオリジナルメンバーではない自分が歌う緊張と、真剣さがステージからも見て取れた。一方の高橋はにっこにこで本当に楽しさがはみ出している。曲中高橋が「みんな一緒にー!」と叫んで腕を「くるくるくる」と回す振付を求めたのには客席もちょっとびっくりしていたが(なんせ初披露だ)、これは定着したら楽しいかもしれない。

名古屋大会では4人のダンサーがサポートしていたが、それが非常に有効に働いていたのが桐谷の「初恋バタフライ」。優雅な動きの桐谷と、フォークロア調の楽曲に合わせた情熱的な舞いを見せるダンサーによる静と動のコントラストが、ステージの上で調和してひとつのパフォーマンスになっている。桐谷はその分せつなさとつややかさを歌にしっかりと込めており、歌い終えると「これで私の仕事はほぼ終わったようなもの」とやり遂げた感じだった。この曲に関しては、演者をカメラで抜くことが多いライブビューイングよりも、ダンサーとセットで見られる現地の方が良さが見えたかもしれない。この曲にかぎらず、笑顔でフル稼働した4人のダンサーもこのライブの功労者だ。

山崎とMachicoの「Growing Storm!」はこの2人が並んでいることによるメジャー感、王道感は流石。5人曲を2人で歌うこともあり、山崎が「未来の風はいつだって 私たちに向かって吹く」のロングソロで非常に気を張って大事に大事に歌っているのが伝わってくる。想いが緊張がストレートに歌に出て、共感して応援したくなるのは山崎の魅力だろう。背中を任せるmachicoの揺るがなさ、安定感は本当に頼もしい。「リハで曲中に翼って呼んだら未来って返してくれて泣きそうになった」とデレデレの山崎は、曲後MCでずっとMachicoの腰を抱いていた。

この曲をカバーするならこの2人しか! な第3ブロック

<765プロカバーコーナー>
M12:START!!(山崎、諏訪)
M13:I Want(Machico、藤井)
M14:ゲンキトリッパー(稲川、木戸)
M15:99 Nights(高橋、桐谷)
M16:オーバーマスター(渡部、愛美)

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765プロカバーコーナーは、ファン投票を参考に選ばれた765プロ楽曲をデュエットで披露した。個人的にびびっときたのが「ゲンキトリッパー」だ。高槻やよいの代表曲のひとつだが、実はライブでの披露回数は意外と多くない。それというのも「キラメキラリ」が盛り上がるライブナンバーとしてあまりにも完璧すぎて、「ゲンキトリッパー」や「スマイル体操」はちょっと割を食ってしまう部分がある。そこに来ての、今回のカバーである。大神環と矢吹可奈が「ゲンキトリッパー」。そう来たかー! というぐらいイメージにピッタリ来る。やよいの舌っ足らずな歌い方とは違うが、元気いっぱいに満面の笑顔で歌う稲川の「環がこの曲を歌っている」感じがとにかく最高だ。最後の木戸に「このままずっと」にちょっと歌謡曲っぽい余韻があったりと、カバー曲を自分のものにしている感じがとても良かった。それにしても長いツアーの始まりに「ゲンキトリッパー」はなかなか気が利いている。

「オーバーマスター」。765プロじゃなくて961プロ楽曲じゃねーか! と少し思ったが、765プロに憧れるだけでなく、超える気概を持った曲を持ってきたのにはにやりとさせられる。ジュリアと愛美にこのナンバーが最高に合うことは明らかだが、カッコイイにも対応できる渡部の引き出しを楽曲が引き出してくれた。「オーバーマスター」は、渡部が6年前、初めて秋葉原で手にとったアイマスのCDだったとのこと。その6年後、渡部がライブでその曲を歌う巡り合わせの妙を感じる。ちなみに「オーバーマスター」は同日発売の765プロ「Colorful Days」と売上勝負をしていたのだが、渡部が961派だったのかちょっと気になるところだ。

その場所に彼女も立った最終ブロック

M17:Decided(諏訪、高橋)
M18:素敵なキセキ(山崎)
M19:アフタースクールパーリータイム(藤井)
M20:瞳の中のシリウス(諏訪、愛美、木戸)
M21:ジレるハートに火をつけて(稲川、桐谷、藤井)
M22:深層マーメイド(Machico・渡部)
M23:水中キャンディ(高橋)
M24:流星群(愛美)
M25:Believe my change!(Machico)
M26:STANDING ALIVE(Machico・木戸)

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山崎の「素敵なキセキ」は、「LTD」デュエット曲の初披露の「Decided」の盛り上がりの次。切り込み隊長でもトリでもないフラットな出番。リーダーをMachicoと木戸が務め、それをサポートする役割。これまで『ミリオンライブ!』の先頭を走ってきた山崎の重みと背伸びを取り払った山崎が何を見せるか。何が観客の目に映るのか。その答は、冒頭ダンサー2人とともに後ろを向いてリズミカルなステップを踏みながら全力でエアギターを見せる背中から伝わる「楽しい!」の感情の奔流だった。どの楽曲よりも歌いこんできた「素敵なキセキ」を、支えてくれるファンとダンサーと共になんの心配もなく、安心して楽しく歌う。間奏のダンスのキレは増すばかりで、会場全体、そして熟練のダンサーを山崎はるかという存在が引っ張っていることがはっきりとわかる。重みを取り払った山崎は最高に「春日未来」で、今までミリオンを背負って走ってきた彼女の頑張りが、地力としてはっきりと根差していることが感じられた。

一気に駆け抜ける最後のブロックは、クオリティの粋を極めた宝石のような楽曲が並んだ。「瞳の中のシリウス」の3人のファルセットの完璧なバランス感。「ジレるハートに火をつけて」のオリジナルメンバーの中から一番異質なみっつの個性を並べたことによる“オリジナルなのに新しい”感じ。「Decided」をリリイベで聴けないのは残念だと思っていたが、むしろ諏訪と高橋の極上の表現力をより多くの人が、より良い環境で体感するためだったのか、とすら思えた。

組み合わせの化学変化の妙を強く感じたのは「深層マーメイド」。この曲はほんの一週間前にオリジナルメンバーの沼倉とMachicoが披露したばかりだが、ふたつの異なる個性が全力の高いレベルでぶつかりあって均衡する、バトルのような激しさを秘めたパフォーマンスだった。今回の渡部とMachicoのパフォーマンスを聴いて感じたのは、寄り添うようにシンクロした響き。甘さのあるキャラクターの声をキープしたまま声を張るふたりの性質が似ているのか、渡部のパートナーに合わせる対応力が優れているのか、とにかく姉妹のようにぴったりハマる。「違い」を踏まえて楽しめるのはぜいたくな経験だった。

そして最終ブロックのラストの流れは、Machicoのためにあったような気がする。個人的な見立てだが、Machicoは極め付きに魅力的な声質という天性の武器があり、歌唱力も安定感もピカイチと言ってもいい。素材としてのポテンシャルが元からずば抜けている彼女という存在がもう一歩先に行くためには、リーダー、そしてソロのトリというポジションがもたらすものは決して無駄にならないはずだ。誰もが緊張するトリという場所にあって、今回は直前のパフォーマンスが愛美の「流星群」とまた強烈だ。愛美がギターをかき鳴らし「名古屋行くぜー!」と叫んだ瞬間から最後まで続いた爆発的な盛り上がりは、会場の空気を根こそぎ持って行ったかのようだった。

だが、ライブでつないできた全てを想いを受けてのソロのトリという場所は、ファーストライブで、そしてセカンドライブで山崎はるかと田所あずさが背負って駆け抜けた場所だ。「あの光みたいに、きっと、私も!」の叫びは、この瞬間のMachicoにあまりにもシンクロしていたような気がした。ラストの「自分だけの翼で」の絶唱には、この時この曲に賭ける気迫を確かに感じた気がした。

そんなパフォーマンスのあと、Machicoがそのままステージに残ったのには誰もが驚いただろう。個人的には、アニメ『アイドルマスター』第13話の星井美希の姿を思い出した。ここでMachicoと並び立つのはもちろん、名古屋公演もう一人のリーダー・木戸衣吹だ。木戸はミリオンのファーストライブでソロのトリを務めたもう一人の存在でもある。リーダー曲の「STANDING ALIVE」はやや意外な選択だったが(2人は参加していないユニット曲なので)、5人ユニット曲をデュオで歌うと、個人のパートと色の出し方、求められる歌の厚みはぐっと増し、別の曲のようになる。この2人の魅力を引き出せる新たな曲は何かを考えた末の選択だろうか。終盤の掛け合いで2人の歌声が追いかけ合い、響き合う感じはデュオならでは。ラス前で手を取り合って楽しそうに客席を煽った2人がラスト、可憐のロングソロを分け合った歌声は最高だった。

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開幕とは思えないほどのテンション感とクオリティのライブのラストを締めるのは、やはり今まで積み重ねてきたテーマソング「Welcome!!」と「Thank You!」しかない。「こんなにたくさんの光に包まれて、本当に幸せです。ミリオンスターズみんなで走り抜ける、初めてのツアー」(木戸)、「今日見たこの奇跡を、もっともっとみんなと一緒に見続けていきたいと思います。だからこの気持ちをこめて最後の曲、聴いてください!」(machico)「「ありがとう!」」。始まりの楽曲を共に歌い共に叫んだ客席が最後に大合唱した「ありがとう!!」の声は、最高のライブとの別れを惜しむように、長く続く余韻を残した。

Text By 中里キリ

THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 3rdLIVE TOUR BELIEVE MY DRE@M!! @NAGOYA0131
2016.01.31 名古屋国際会議場センチュリーホール
セットリスト

M01:Dreaming!(全員)
M02:エスケープ(愛美、藤井)
M03:カーニヴァル・ジャパネスク(諏訪)
M04:BOUNCING♪ SMILE!(稲川)
M05:デコレーション・ドリ~ミンッ♪(渡部)
M06:Smiling Crescent(桐谷、稲川)
M07:Eternal Spiral(木戸、山崎)
M08:Bigバルーン◎(高橋、渡部)
M09:Growing Storm!(山崎はるか、Machico)
M10:初恋バタフライ(桐谷)
M11:おまじない(木戸)
765プロカバーコーナー
M12:START!!(山崎、諏訪)
M13:I Want(Machico、藤井)
M14:ゲンキトリッパー(稲川、木戸)
M15:99 Nights(高橋、桐谷)
M16:オーバーマスター(渡部、愛美)
M17:Decided(諏訪、高橋)
M18:素敵なキセキ(山崎)
M19:アフタースクールパーリータイム(藤井)
M20:瞳の中のシリウス(諏訪、愛美、木戸)
M21:ジレるハートに火をつけて(稲川、桐谷、藤井)
M22:深層マーメイド(Machico、渡部)
M23:水中キャンディ(高橋)
M24:流星群(愛美)
M25:Believe my change!(Machico)
M26:STANDING ALIVE(リーダーユニット Machico、木戸)
M27:Welcome!!(全員)
M28:Thank You!(全員)

©BANDAI NAMCO Entertainment Inc.

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